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(64)Do You Like Chinese Food?

 マーティ・キーナート


多くの国々では、癌は心臓病についで2番目の死因とされています。しかしながら、心臓病におけるめざましい医学と治療法の発達により癌はその内世界の多くで1番の死因となるようです。世界保険機構はここ数年、世界の6人に一人は癌が理由で亡くなっていると発表しています。

私の母は54歳という若さで脳の癌により亡くなりました。私が大学1年のことです。私は日本に留学中でしたが、帰国して母がこの世を去る前の数日間を一緒に過ごしました。
1992年には、私の大好きな従姉妹が重い白血病であることが判明し、骨髄移植が必要であるとされました。幸いにも従姉妹は、南カルフォルニアのTHE CITY OF HOPE HOSPITAL(シティオブホープ病院)にて治療を受けることができ30年以上経った今も元気に人生を楽しんでいます。
実は私も20年前、このTHE CITY OF HOPE HOSPITALで、脊髄腫瘍の摘出手術を受け無事成功しました。

このTHE CITY OF HOPE HOSPITAL (以下COH)は1913年に設立され、今でも米国における有数の先端癌治療を受けることができる総合病院とされています。COHは、2022年には15,000症例以上の幹細胞移植を行い、その成功率は一貫して米国全国の平均値を上回っています。

最近、このCOHは米国で大きな話題の1つになりました。それはアメリカの大手中華チェーンレストラン「パンダエクスプレス」グループの創立者であるAndrew & Peggy Cherng 夫妻が、彼らが運用するパンダチャリティー家族基金を通じ、約150億円をこのCOHに寄附すると発表したからです。これは病院が受け取った寄付附としては過去最高の金額です。

パンダエクスプレスは、1973年に小さな1軒のレストランから始まり、いまでは2,500店舗、5万人の従業員、5,000億円以上の売り上げを誇るファーストフードチェーンに成長しています。パンダエクスプレスは最近日本にも上陸しました。アメリカンスタイルの中華は若者たちにも大人気の様子です。

Cherng 夫妻はこの高額の寄附を通じて、COHにおいて全国初となる、西洋医学と東洋医学の双方を用いた統合的な腫瘍学プログラムを立ち上げたいとしています。Peggy夫人は「私は米国において西洋医学と東洋医学の双方を用いた治療が多くをもたらす事が出来ると信じています。そしてCOHは、多くの癌患者に対してより一層進んだ治療を与える事ができる可能性を持っています」と語っています。

昨今の米国では、東洋医学に関する関心は非常に高く、40%もの癌患者は西洋と東洋の統合的なケアを受けているとされています。研究によるとこの統合ケアで、より健康的で生活の質を向上させ治療の最も良い結果を生み出す事ができるとされています。
過去40年間においてCherng夫妻は、教育、健康、災害援助などへの惜しみない篤志活動を通して、このように話しています。 「もし我々の隣人がうまくいっていれば、それは私たちの地域を良くする、そして地域が良ければ国がよくなる。そして誰もが幸せである」と。

今度パンダエクスプレスを見かけたら、ぜひこの創立者の理念を思い出して、食べて見てください。あなたの支払いが、先端癌治療の1部を手助けしているかもしれません。



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マーティ・キーナート

<プロフィール>

アメリカ ロサンゼルス生。1968年スタンフォード大学卒。1969年慶応大学日本語コース修了。以来滞日40余年、一貫して日米を通じたスポーツビジネスに身をおく。2004年「東北楽天ゴールデンイーグルス」の初代ゼネラルマネージャー。仙台大学特命副学長/東北大学特任教授などを歴任。2018年よりプロバスケットボールチーム「仙台89ERS(エイティナイナーズ)」のオーナー代行兼シニアGM就任。   

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