コラム

(10)FIND YOUR OWN REASONS FOR DONATING

 マーティ・キーナート


アメリカでは寄附行為が、特別なことではなく一般人にとってもごく身近な行為だとよく言われます。私がアメリカに住んでいた頃、私への寄附の依頼はあとを絶ちませんでした。数ある寄附依頼の中から、自分の好みの団体へ寄附するのはごく自然なことでもあります。ですので私は大学生だった頃ですら、子供たちを助ける活動へのチャリティーへほんの少額の寄附をするようになっていました。


私の最初の寄附活動は、ユニセフ/UNICEFでした。ユニセフ(国際連合児童基金)は、第二次世界大戦の後、荒廃した国々の子供たちを救う食料や医療を与える為に1946年に設立されました。ユニセフは、今では世界のあらゆる開発途上国の子供や女性たちを救い、また190ヶ国以上で慈善活動を行っています。当時まだ若かった私がなぜユニセフの活動に興味を持ったかというと、実はスタンフォード大学での私のクラスメイトでよき友人でもあったディーナ・ケイ/Dena Kaye のおかげです。彼女の父は、アメリカで有名な俳優でありダンサーでありコメディアンでもあったダニー・ケイ/Denny Kaye で、そして彼のお気に入りのチャリティ活動がユニセフであったのです。彼は頻繁にテレビでも発展途上国の現状を訴えユニセフへの寄附を呼びかけており、それに感銘を受けた私は、わずかながらの寄附を続けていました。


私が寄附を始めたもう1つのチャリティは、テネシー州メンフィスにあるセントジュード子供病院でした。私がこのチャリティのことを知ったのもテレビからでした。この病院は、コメディアンで俳優のダニー・トーマス/Danny Thomas が難病、特に癌患者の子供たちのために1962年に始めた病院です。母や他の親戚を若い頃に癌で亡くしている私にとっては、これが心に響いたのでした。

セントジュード病院が1962年に設立された当時、白血病の子供の生存率はたったの4%でした。が今日ではその生存率は94%です。また子供の癌患者の生存率も20%から現在では80%まで上がっています。この病院に助けを求める患者は、全米50州だけでなく世界70ヶ国から訪れます。そして、なんとこの病院に来た患者は一銭も治療費を払う必要はないのです。これは1991年にこの世を去った亡きダニー・トーマスの素晴らしい遺産であります。


その後も決して大きな金額ではありませんが、私は捨て犬の保護団体や、震災の後の緑の環境保護団体などに寄附をしています。また私の妻は、発展途上国の女子の教育を助ける団体に寄附をしています。


このように寄附というのは自分の手持ちを削り人のために使っていただくという精神に基づく行為であり、どんなに少額であったとしてもそこには理由が必ず存在します。その理由が寄附者にとってはもっとも重要な事なのです。




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マーティ・キーナート

<プロフィール>

アメリカ ロサンゼルス生。1968年スタンフォード大学卒。1969年慶応大学日本語コース修了。以来滞日40余年、一貫して日米を通じたスポーツビジネスに身をおく。日米両国においてビジネス、プレイヤー双方の実経験から、日米比較や日本の教育システムにさまざまな問題を提起。2004年「東北楽天ゴールデンイーグルス」の初代ゼネラルマネージャー。仙台大学特命副学長/東北大学特任教授。

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