コラム

(48) A New School of Sustainability for Tohoku University?

 マーティ・キーナート


慈善事業に関する話題でここ数ヶ月のビックニュースは、間違いなく米国のアン&ジョン・ドーア夫妻によるスタンフォード大学への約1,400億円にもなる寄附でしょう。これは、スタンフォード大学でも過去最高額の寄附額であり、また教育機関にされた寄附の中では史上2番目に高額の寄附です。ちなみに最高額は、2018年のマイケル・ブルームバーグ氏のジョンホプキンス大学への約1,900億円の寄附です。

このシリコンバレーの成功者であるドーア夫妻の寄附について、私はいくつかの興味深い事実に気がつきました。1つは、ドーア夫妻はどちらもスタンフォード大学の卒業生ではないということ。ジョンはライス大学で電気工学の学位を取った後、ハーバード大学院でMBAを取って卒業しています。ハーバード大学院を修了後、ジョンはインテル社に入り最も成功した営業マンとして活躍しました。その中でいくつかのメモリーデバイスの特許を取った後、1980年にKleinar Perkins投資会社に参画し、やがて代表取締役に就任しました。
この投資会社で、彼は世界で名だたるハイテク企業への投資を実現させました。その中には今や巨大企業のアマゾン社、グーグル社、ネットスケープ社などがあります。
もう1つ注目すべきは、ジョンはその全ての投資において地球温暖化と闘うクリーンエネルギーのテクノロジーを熱烈に支援していることに加え、自らも広範囲に渡り活動し続けており、その使命感のもと今回の多大な寄附が行われたという点でしょう。

去年の11月に出版された彼の最新著書
“Speed & Scale: An Action Plan for Solving Our Climate Crisis Now”や、
彼のTED TALKの中でもその信念を熱く語っています。

この強い信念のもと、スタンフォード大学へのジョンからの多大な寄附に加え、YAHOOの創設者でスタンフォード大学の卒業生でもあるジェリー・ヤンとデービッド・フィロら他の篤志家からの寄附も集まり、総額約2,000億円の資金を基にスタンフォード大学では70年来で初の新設学部となる「Stanford Doerr School of Sustainability」が創設されました。この「Stanford Doerr School of Sustainability」は、地球の長期的な繁栄を前進させる為に必要な8つの分野(①気候温暖化/②地球と惑星の化学/③エネルギー技術/④持続可能な都市計画/⑤自然環境/⑥食べ物と水の安全/⑦人間社会と行動/⑧人類の健康とその環境)における学問と研究を基に構想されています。

もちろん日本においてこのような巨額の寄附金は現実的ではありませんが、この学部創立のコンセプトには、おおいに注目するべきだと思います。なぜなら、誰もが健やかに平和に暮らしていける地球を維持することに貢献することは、世界共通の課題なのですから。



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マーティ・キーナート

<プロフィール>

アメリカ ロサンゼルス生。1968年スタンフォード大学卒。1969年慶応大学日本語コース修了。以来滞日40余年、一貫して日米を通じたスポーツビジネスに身をおく。2004年「東北楽天ゴールデンイーグルス」の初代ゼネラルマネージャー。仙台大学特命副学長/東北大学特任教授などを歴任。2018年よりプロバスケットボールチーム「仙台89ERS(エイティナイナーズ)」のオーナー代行兼シニアGM就任。   

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東北大学でもウクライナ支援の募金を実施しております。
以下URLより詳細をご覧いただけます。皆様からのご支援お待ちしております。

https://www.kikin.tohoku.ac.jp/news/news_detail/view_express_entity/10

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