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(44) Quality, not just Quantity Giving

 マーティ・キーナート


今月、最近の慈善事業の話題をオンラインで見ていたところ、「2021年慈善活動話題トップ10」という記事が目に留まり、その中の1つの話が最も私の興味を引きました。2021年6月15日に掲載された「マッケンジー・スコットは総額約3000億円を寄附した」というものです。

名前がすぐにはピンとこなかったので、少しリサーチしたところ、この寛大な女性が何者かすぐに分かりました。スコット氏の旧姓はベソス。あのアマゾン社の創始者であり世界一、二を争う大富豪ジェフ・ベソス氏の前妻だったのです。ジェフ・ベソス氏の総資産は約23兆3500億円、現在はテスラ社の創始者であるイーロン・マスク氏(総純資産約34兆1000億円)に次いで世界第2位につけています。

マッケンジーとジェフ・ベソス氏は2019年に離婚しましたが、その際マッケンジー氏は、アマゾン社の株の4%を慰謝料の一部として受け取りました。このおかげで彼女は世界第3位の資産を持つ女性に躍り出ました。しかしも現在の株価の上昇(日本円で約4兆1500億円)で、昨年9月には彼女は一気に世界第1位の女性富豪になったのです。

ですから、昨年1年間でマッケンジー氏が3,000億円を寄附したと言っても、それは彼女の莫大な資産を考えればそれほど意外ではありませんでした。しかしながら私が賞賛したいのは、彼女の寄附先です。今回、彼女は歴史的に支援を受けられず、見過ごされている300以上ものコミュニティや団体に率先して寄附を行ったのですが、その中には、人種や宗教的に少数派の人々への差別の是正、女性や女子の地位向上の支援、黒人やその他の有色人種,低所得者層の学生のための高等教育の提供をしている団体などが含まれていました。

この寄附先リストをみると、マッケンジー氏がネィティブ・アメリカン(アメリカ先住民族)に対して強い関心があり大きな支援を行っている事が分かります。
1619年から1863年頃、アフリカ民族の人々が現地から拉致され、植民地開拓のためにアメリカへ奴隷として連れてこられた事はよく知られています。ですから、現在の多くの慈善活動がその過去の賠償の一部として、アフリカ系アメリカ人を支援する活動に重点がおかれているのは最もな事です。
しかしながら、1492年入植したクリストファー・コロンブスを始め、多くのヨーロッパの白人の侵略者達に自らの土地を奪われたアメリカ先住民達への支援は、アフリカ系アメリカ人と同じく長年不当に扱われてきたのにも関わらず決して多くないと言います。

私はマッケンジー氏が見過ごされがちなこのような人々に大きな関心を寄せ、単に多額の寄附をするだけではなく、価値あるお金を本当に必要とされているところへ届けている事が大きな賞賛に値すると思いました。

アメリカ先住民族を支援する「Native Americans in Philanthropy」のエグゼクティブディレクター:エリック・ステグマン氏曰く、
「アメリカ先住民族は多くの慈善事業から外されがちなのは事実で、2019年では全ての寄附金額のたった0.5%のみしかアメリカ先住民族へ支援されていない」そうです。

マッケンジー氏の支援先の一部は以下の通り:
Some of the MacKenzie philanthropy beneficiaries:
Native Americans in Philanthropy: https://nativephilanthropy.org
American Indian College Fund: https://collegefund.org
HIAS - Welcoming refugees to America
PA'I Foundation - Preserving & perpetuating Native Hawaiian arts & cultural traditions

ABFE: A Philanthropic Partnership for Black Communities, Candid, El Museo del Barrio, Faith in Action, GivingTuesday,, the Mann Deshi Foundation, Motown Museum, Muslim Advocates, PEN America Writers' Emergency Fund, Race Forward, Solidaire Network, and Women's Funding Network.



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マーティ・キーナート

<プロフィール>

アメリカ ロサンゼルス生。1968年スタンフォード大学卒。1969年慶応大学日本語コース修了。以来滞日40余年、一貫して日米を通じたスポーツビジネスに身をおく。2004年「東北楽天ゴールデンイーグルス」の初代ゼネラルマネージャー。仙台大学特命副学長/東北大学特任教授などを歴任。2018年よりプロバスケットボールチーム「仙台89ERS(エイティナイナーズ)」のオーナー代行兼シニアGM就任。   

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