コラム

(51)Millionaires call on governments worldwide to ‘tax us now’

 マーティ・キーナート


多くの国では、超富裕層ほど出来るだけ少なく税金を払っているというのは常識でしょう。財産が多い人ほど、優秀な税理士や会計士を雇い、税法の穴を潜り抜け、いかに節税できるかを計算してもらっているのです。
アメリカ、そして世界でも最も裕福な実業家の一人であるウォーレン・バフェット氏は、彼の秘書よりも安い税金を払っていると豪語していましたし、ドナルド・トランプ前大統領は、賢い人ほど税金を安く納めるのだと自慢していました。

このコロナ渦のパンデミックの数年間、世界中で貧しい人ほど最も苦境に立たされてきました。フォーチュン誌によれば、2021年収入が最下層から40%の層の人々は、パンデミック前に比べると、さらに7%も収入が減少したそうです。一方で、世界最富裕層のトップ10名は、同じ期間でその富をなんと2倍に増やしているというのです。例えばテスラ社のCEOであるイーロン・マスク氏の財産は、2020年の3月以降1000%増加しその総資産は約35兆円になっていますし、Amazon社のジェフ・ベゾス氏も同様です。

ですから、102人の世界の億万長者達が「私達にもっと課税を!」と各国の政府に訴え共同署名した公開書簡のニュースは特に喜ばしいことでした。
この声明は、本来、今年1月にダボスで開かれた世界経済フォーラムで発表される予定でしたが、フォーラムがコロナの為に5月に延期された為、最近になり脚光を浴びています。

「世界がこの2年間、計り知れないダメージを被っている間、私達は私達の財産がパンデミックの間にどんどん増えていくのを眺めていましたが、私達は本当に公平な税金を支払っていると言えるのでしょうか?私達にもっと課税をするべきです」
と米国、ドイツ、そしてデンマークを代表する最富裕層団体からなる代表者達は訴えます。
米国の代表には、有名なディズニーの子孫であるアビゲイル・ディズニーや、Facebookの創業者の一人、クリス・ヒューズ、投資家のジョージ・ソロスなどの名前が並びます。

最近の米国議会でも、5%の富裕税を年間13億円以上の収入がある個人に課すこと、さらに3%を30億円以上の収入がある個人に課すことを提案する議員が複数いました。この課税案に当てはまる人は全ての納税者の約0.02%にすぎませんが、ホワイトハウスの試算によれば、これだけでも今後10年間で約30兆円以上の税収が見込めると発表しています。

長年、この富裕層への課税案を声高に訴えてきた映画監督で、慈善活動家のアビゲイル・ディズニーはこう説明しています。「私は、我々の政府と国民へのその援助をとても重んじています。私は、公共の交通機関や道路、下水道、信号、綺麗な水や安全な食べ物、その全てを大事に有難く思っています。私は、公共の公園や場所、そして公立学校や大学に深く感謝しています。私はこれらの恩恵を受けてきたものとして、私の仲間の市民の皆さんのために、誰よりもその保全と保存にもっともっと貢献しなくてはいけないと思っているのです。そして私のような人に税が課せられるとしたら、それはただ単に私が払えるからであると考えます。」と。

この世界の最富裕層からの声明の中に、日本の富裕者が含まれているかどうかは不明だったのですが、日本からも賛同している方がいる事を期待しましょう。



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マーティ・キーナート

<プロフィール>

アメリカ ロサンゼルス生。1968年スタンフォード大学卒。1969年慶応大学日本語コース修了。以来滞日40余年、一貫して日米を通じたスポーツビジネスに身をおく。2004年「東北楽天ゴールデンイーグルス」の初代ゼネラルマネージャー。仙台大学特命副学長/東北大学特任教授などを歴任。2018年よりプロバスケットボールチーム「仙台89ERS(エイティナイナーズ)」のオーナー代行兼シニアGM就任。   

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