コラム

(4)Real Philanthropy

 マーティ・キーナート


最近、Mother Jones Magazineという雑誌の特集で、歴代米国大統領の優劣をつけるアンケートが発表されました。最高の大統領1位に評されたのは、第16代リンカーン大統領で、続いて第1代ジョージ・ワシントン大統領、そしていうまでもなく最低となったのは、第45代のドナルド・トランプ現大統領でした。


「Make America Great Again」~「アメリカを再び偉大に!」のフレーズがお得意なトランプ大統領は、歴代の大統領の中では最も対立を多く産み出す大統領であります。彼は「アメリカのために」と称して友好な同盟国に喧嘩や難題をふっかけたり、かと思えば世界有数の独裁者を褒め称え突然手を繋いだりするわけです。私は個人的には、先のアンケートで歴代7位に選ばれた第44代バラク・オバマ大統領の紳士的で常に優雅であった人間性と態度を非常に惜しんでいます。


さてこのオバマ前大統領は、近年新たな財団を立ち上げています。世界を住みよくより良い場所にする為というこの慈善財団は、オバマ前大統領が全額を支援しシカゴ大学の中のハリススクールにてオバマ基金を立ち上げました。年間25人に与えられる奨学金は、修士課程における全ての学費、教材費、生活費、さらにお小遣いまでが支給されます。


この修士課程の奨学金に応募できる条件にはこう書かれています。

"people from around the world who are already making a difference - in civil society, in government, in the private sector, or as entrepreneurs.”

市民社会、政府、私設団体においてもしくは企業家としてすでに世界に変革を起こしている人。


この秋、このオバマ基金を受け修士課程を修了した最初のグループの中には、アリス・バーベというフランス人がいました。彼女は、難民とその受け入れ国の間の協力体制を作りあげる組織の共同創立者としてすでに立派な組織を運営していました。また、シンガポールから参加のバネッサ・パランジョイはフリーダムカップというNPO法人の共同創立者であり、彼女は発展途上国に再使用できる女性の生理用品を届ける運動をしていました。ナイジェリアからのオルセン・オニグビンデは、政府をもっと透明化する為にその予算と会計書類をもっと簡潔にする会社を運営していました。その他の奨学生も、南アフリカ、パラグアイ、コロンビア、ベトナム、チュニジア、ブルガリア、カメルーン、そしてインドなど世界各国から選抜されていました。そしてこの奨学生達はここでの修士課程を修了後、自国に戻りアメリカでアメリカの奨学金を使って学んだ事を自国の発展の為に活かすように言われるのです。


私は大声でこう叫びたい気分なのです。「バラク・オバマ、あっぱれ!」と。彼は「アメリカファースト」を常に考えているわけではない、考えているのは「ワールドファースト」、そしてそれが本当の意味のphilanthropy - 社会貢献 だと思うのです。


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マーティ・キーナート

<プロフィール>

アメリカ ロサンゼルス生。1968年スタンフォード大学卒。1969年慶応大学日本語コース修了。以来滞日40余年、一貫して日米を通じたスポーツビジネスに身をおく。日米両国においてビジネス、プレイヤー双方の実経験から、日米比較や日本の教育システムにさまざまな問題を提起。2004年「東北楽天ゴールデンイーグルス」の初代ゼネラルマネージャー。仙台大学特命副学長/東北大学特任教授。

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