コラム

(37) Everyone Deserves a Chance

 マーティ・キーナート


日本でも、慶応大学や早稲田大学のような私立大学の方が、国立大学よりも多くの寄附が集まると知られています。アメリカでも同じですがアメリカでは昨今、資金がある大学はさらに資金を得続ける一方、本当に資金が必要とされる大学にはお金が集まりにくいという事実が問題になっています。

全米の大学で、現在最も大きな基本基金を持つ大学のランキング(1~10位)は以下になります。

1. ハーバード大学 $36.45 billion(約3兆6,450億円)
2. イエール大学 $25.57 billion(約2兆5,570億円)
3. (公立)テキサス大学 $24.08 billion(約2兆4,080億円)
4. プリンストン大学 $22.72 billion(約2兆2,720億円)
5. スタンフォード大学 $22.22 billion(約2兆2,222億円)
6. マサチューセッツ工科大学(MIT) $13.47 billion(約1兆3,470億円)
7. (公立) テキサス A&M大学 $10.48 billion (約1兆480億円)
8. ノースウェスタン大学 $10.19 billion(約1兆190億円)
9. ペンシルバニア大学 $10.13 billion(約1兆130億円)
10. (公立)ミシガン大学 $9.95 billion(約9,950億円)

なお、このランキングには7つの私立大学と3つの公立大学が入っていますが、これらの7つの私立大学への毎年の寄附金は、3つの公立大学よりはさらに大きい金額です。
では、なぜ公立のテキサス大学とテキサスA&M大学、ミシガン大学の寄附金が多いのか、それは彼らのフットボールチームの熱狂的なファンがとても多いからです。フットボールチームなくして、彼らは資金を得ることはできないのです。

ですから、今月(2021年6月)の初めに公立のウエスタンミシガン大学が約550億円もの寄附を得たニュースは全米の大きな話題となりました。これはアメリカの公立大学が得る1回の寄附金としては過去最高額です。
ウエスタンミシガン大学の同窓生であるこの寄附者は匿名を希望しており、その人物は自らの名前を売るためにしたわけでないのは明らかです。寄附者は、全米の中間層の教育に大きな変化をもたらすためにこの寄附を行ったといい、一般学生が授業料等の教育資金を支払えることのできる教育環境にしたいということです。
550億円のうち、300億円は医学部へ、200億円は、資金援助を必要とする学生への支援、教職員の確保やその他の大学の活動へ、そして50億円はスポーツのプログラムへと渡りました。
ウエスタンミシガン大学のそれまでの基本基金の総額が480億円だったことを考えると、この1回の550億円の寄附がどれだけ大きな寄附金額だったかという事がわかります。

私はこの話に非常に感心しました。教育はあらゆるレベルにおいて必要であり、資金状況や家庭環境にかかわらず全ての学生には成功へのチャンスが与えられるべきです。日本もそうありたいですね。



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マーティ・キーナート

<プロフィール>

アメリカ ロサンゼルス生。1968年スタンフォード大学卒。1969年慶応大学日本語コース修了。以来滞日40余年、一貫して日米を通じたスポーツビジネスに身をおく。2004年「東北楽天ゴールデンイーグルス」の初代ゼネラルマネージャー。仙台大学特命副学長/東北大学特任教授などを歴任。2018年よりプロバスケットボールチーム「仙台89ERS(エイティナイナーズ)」のオーナー代行兼シニアGM就任。   

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