コラム

(13)Let’s Help Students with their Student Debt

 マーティ・キーナート


2019年5月19日、ロバート・F・スミス氏は、アトランタ州ジョージアにある歴史的に黒人の男子学生の大学であったモアハウスカレッジにて、卒業講演を行いました。このカレッジは、マーチン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の母校である事でも知られています。


スミス氏は、コーネル大学を卒業後、コロンビア大学ビジネススクールでMBAを習得、化学エンジニアであり投資家でもあり、そして2018年にはフォーブスマガジンにてアメリカで163番目の資産家であると同時に、資産5,500億円以上を持つアフリカ系アメリカ人の資産家の第1位に選ばれています。


2019年のモアハウス大学の400人の卒業生は、5月19日のメインスピーカーにこのような著名なスミス氏を迎えることを非常に光栄な事と喜んでいました。しかもそのスピーチの途中で、彼は「アメリカでの8世代目である私の家族を代表し、私達は貴方の乗るバスに少しばかりのガソリンを注ぐ事にします。私は、貴方達2019年度卒業生の学生ローンを完済する為の奨学金を設立します。そして、将来、貴方達は貴方達の後輩にも同じ事をすると信じています。」と発表し、学生達を興奮の渦に巻き込んだのでした。


このたった一言の声明により、スミス氏は、約44億円ほどの学生ローンを一気に消し去ったのでした。


AP通信のインタビューに答えた学生の一人、アーロン・ミッチョンは、彼の学生ローン約2,200万円は、彼が将来稼げるサラリーの半分を毎月返済に当てたとしても25年間はかかるだろうと換算していた、と話しました。その金額があっという間にゼロになるなんて信じられないと嬉し涙を流しました。


アメリカでも日本同様、学生ローンは大きな社会問題です。アメリカの学生の現在の学生ローン高は実に総額1,600兆円近くにのぼると言われています。日本はどうでしょうか。これほど高い金額ではないにせよ、多くの学生の肩に大きな借金が乗っているのは確かな事でしょう。またそれにより、多くの学生が自分の興味のある分野を諦め、より収入の高い仕事を選ばざるをえないという現実もあるでしょう。


私が好きなスミス氏の言葉がありました。


「どの大学でどういう勉強をしたいかは、どこからその学費を得るかで決められるべきではないのです。貴方の知力への熱心さと、創造性への勇気と、そしてたとえ貴方への期待が低かったとしても、それをはるかに超える貴方のその根性とやる気によってこそ、貴方への機会が与えられるべきなのです。」と。日本の学生にもそのような機会が与えられるといいですね。



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マーティ・キーナート

<プロフィール>

アメリカ ロサンゼルス生。1968年スタンフォード大学卒。1969年慶応大学日本語コース修了。以来滞日40余年、一貫して日米を通じたスポーツビジネスに身をおく。日米両国においてビジネス、プレイヤー双方の実経験から、日米比較や日本の教育システムにさまざまな問題を提起。2004年「東北楽天ゴールデンイーグルス」の初代ゼネラルマネージャー。仙台大学特命副学長/東北大学特任教授などを歴任。   

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