（61）Big Dreams & a Big Heart

6月18日に起きた北大西洋でのタイタン潜水艇沈没事故の悲劇はまだ記憶に新しいことでしょう。行方不明から4日後、大規模な捜索活動にもかかわらず、潜水艇の乗組員と乗客五人全員の生還は叶いませんでした。
1912年、氷山と衝突して沈没したイギリスの豪華客船タイタニック号のことは、誰もが知っています。2,240人の乗客のうち1,514人が亡くなり、その遺体の多くが未だ沈没した船の中にあると言われています。タイタン号は、そのタイタニック号の沈没現場を訪れるツアーの潜水艇でした。

6月22日、タイタン号は深海で水圧により圧潰したと発表されました。亡くなったとされる乗客は、
ストックトン・ラッシュ氏 – タイタン号を建造したオーシャンゲートのCEO
シャーザダ・ダウッド氏　– パキスタンの大富豪
スレマン・ダウッド氏　– シャーザダ氏の息子
ポール・アンリ・ナルジョレット氏―フランスの深海探検家、タイタニック号事故の研究者
ハミッシュ・ハーディング氏 – 英国の実業家
の5人でした。

このうちのハーディング氏は、
2019年に南極北極間の横断最速記録(46時間40分22秒)、2021年には潜水艇でのマリアナ海溝への最深部到達記録(4667メートル)と最速到達記録の3つのギネス世界記録を持っていました。
また、その偉業に加え多くの報道にもあったように大変な篤志家でもあり、数えきれないほど多くのチャリティ事業を行っていました。

その有名なものの1つには、国連のワールドフードプログラムがあります。そのポリシーは、
"the largest humanitarian organization saving and changing lives worldwide. We bring life-saving relief in emergencies and use food assistance to build a pathway to peace, stability and prosperity for people recovering from conflict, disasters and the impacts of climate change.”
https://ja.wfp.org/homepage?_ga=2.189971307.1771174974.1688193930-880880803.1688193930
とあり、
ハーディング氏の精力的な活動のおかげで、このプログラムは2016年のWFPの人道主義賞を受賞しています。またハーディング氏が力を注いだチャリティとして、International Rescue Committee 国際救済委員会(以下IRC) があります。IRCは、40以上の国とアメリカの28都市に組織を広げ、人道的危機に直面する人々に生活を立て直す手助けをしています。

"We help to restore health, safety, education, economic wellbeing and power to people devastated by conflict and disaster. And we are proud to fight for a world where women and girls have an equal chance to succeed."
https://www.rescue.org/who-we-are

その他、彼のユニークなチャリティ事業の１つとして、野生のチーターを救う活動もありました。過去１００年の間に野生のチーターは約９０%近くも減りいまや絶滅の危機を迎えています。ハーディング氏は、スピード狂でもあり、世界で最も足が速い動物のチーターをこよなく愛していました。昨年、彼は自分の飛行機で8匹のチーターをすでにチーターが絶滅してしまったインドにあるクノ国立公園に移住させました。
彼の意思を継いで、このチーター達が新地で繁殖することを願います。

このような活動を世界中で続けていた彼の死は、世の中にとって本当に残念なことでした。
ハーディング氏は、大きな夢と大きなハートを持った人でありました。May he rest in peace.