コラム

(28) SMALL Donations can make a BIG Difference

 マーティ・キーナート


コロナウィルスによる世界的パンデミックで大恐慌なみの失業率が高まる中、もちろん世界中の慈善事業の団体もその影響を受けています。
慈善事業記録誌の調査によると、2020年の最初の3ケ月で米国の個人からの寄附は6%もダウンしたそうです。この調子が今年いっぱい続くとすると慈善団体全体で2兆7500億円ものの収益ロスが見込まれ、40%のアメリカの慈善団体は存続の危機を迎えるとのことです。
このような暗いニュースが続く中、私は1つの明るい話題を見つけました。金銭的に余裕のない大学生達が自分たちでできる限りの寄附をすることで社会を変えていこうという話です。

皆さんもニュースで目にしているかと思いますが、アメリカでは今年アフリカ系アメリカ人が白人アメリカ人によって殺害されるという事件が立て続けに起こり大きな社会問題に発展しています。2月23日、ジョージア州で2人の白人アメリカ人がジョギングをしていただけのアフマッド・オーブリー氏を殺害するという事件が起こりました。3月13日には、ケンタッキー州ルイジアナで白人の警官が間違えて突入したアパートで、ボーイフレンドと就寝中だったブリオナ・テイラーさんを8回も撃ち射殺してしまいました。また5月25日にはミネソタ州ミネアポリスにて、白人警官がジョージ・フロイド氏を拘束中に窒息死させました。警官がフロイド氏の首を膝で8分間以上も圧迫し続けたためです。

このようなもはや事故とは言えない意味のないアフリカ系アメリカ人の殺害事件の蓄積が、Black Lives Matter運動に拍車をかけたのです。そしてそれは全世界へ広がり、全ての人々への社会的公正を求める運動へと発展しました。
この運動には多くの学生達も参加しました。また、同時に彼らは、自身が学生ローンを抱え、将来も不安な状況であるにも関わらず、この正義を求めるBlack Lives Matter運動やその他の人種差別撤廃組織への寄附を行っていました。

そのひとつがTHE BAIL PROJECT(保釈金プロジェクト)への寄附です。

多くのアメリカの都市において、Black Lives Matter運動のデモ参加者たちは警官の干渉なしに平和的に抗議活動を行っていました。しかしいくつかの都市ではデモ参加者の多くが拘束され拘置所に入れられました。拘置所に入れられた場合、そこから出るには保釈金が必要となってきますが、大抵、このようなデモ参加者は保釈金を払う余裕がありません。このような人々のために、数多くの学生たちが保釈金を支払うことができない人々の手助けをしている最大組織「THE BAIL PROJECT(保釈金プロジェクト)」への寄附を行う支援に動いたのです。
この組織には6月だけで20万人以上の新規のオンライン寄附者が現れたのですが、その寄附者の大半が5ドルや10ドルを寄附する大学生達でした。

支援に動いた学生の1人であるメリーランド州の大学生活動家のビーナス・オクワカさんはこう言っています。
「学生のように裕福でない人が少額でも続けて寄附することが重要なのです。私は人々に訴え続けています。確かに今すぐ寄附をする事も良い事だけれども、10ドルを10ケ月続けて寄附する方が100ドルを今一度きり寄附するより重要かもしれない。だって彼らには活動し続けてもらわないといけないのですから。」と。
そして、「あなたの寄附が人種差別をただちに消し去るわけでは決してありません。だからこそ、寄附のような支援は長い期間の積極的な行動でなければならないのです。人種差別や社会的差異は、長い間かけて作りあげられたのですからそれを緩和するのにも長い時間がかかるのです。」と続けています。

その通りです。少ない金額でも続けていれば、あなたの行動が大きな変化を起こす事ができますね。



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マーティ・キーナート

<プロフィール>

アメリカ ロサンゼルス生。1968年スタンフォード大学卒。1969年慶応大学日本語コース修了。以来滞日40余年、一貫して日米を通じたスポーツビジネスに身をおく。2004年「東北楽天ゴールデンイーグルス」の初代ゼネラルマネージャー。仙台大学特命副学長/東北大学特任教授などを歴任。2018年よりプロバスケットボールチーム「仙台89ERS(エイティナイナーズ)」のオーナー代行兼シニアGM就任。   

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