コラム

(63)A Successful Pro League Giving Back

 マーティ・キーナート


FIBAバスケットボールワールドカップでの日本代表チームの大活躍、そしてパリオリンピック出場おめでとう!

試合を熱心に見ていた人ならもちろん気がついたと思いますが、代表チームすべてに、NBA選手がスタメン入りしていましたね。今回の日本チームには、NBAのフェニックス・サンズで活躍する渡邊雄太選手がいました。もう一人の日本人NBAスター選手の八村塁選手は、残念ながら今回はチームに入っていませんでしたが、これは、所属するロサンゼルス・レイカーズの所望によるものだと囁かれています。レイカーズは、八村選手と3年75億円という大契約を結んだばかりで、もちろんこの若い大スターが開幕前に怪我をするリスクはできるだけ避けたかったでしょう。二人が一緒に活躍するのを見られなかったのは残念でした。

ところで、昨シーズンのNBA選手の平均年俸は、15.4億円前後と言われています、これは世界の他のスポーツの最高年俸をはるかに超える高額報酬です。
その現在のNBAで一番有名なスター選手は、なんと言ってもLeBron James(レブロン・ジェームズ)でしょう。
65.4億円の年俸に加え、約117億円の広告収入、その総収入は200億円に迫る勢いです。信じられないほどの金額でしょう。

NBAリーグは、その選手のほとんどを黒人選手が占めています。昨シーズンは、黒人選手が73.7%、白人選手が16.8%、ラテン系選手が3.1%、アジア系選手0.4%、そしてミックス人種選手が6.6%とされています。
私はプロスポーツ競技で利益を生み出しているNBAが、先日、その恩恵を一番生み出している黒人コミュニティに興行で得た利益を還元したいと発表したことを大変喜ばしく思いました。
NBAは、自らが運用するNBAチャリティ基金プログラム“NBA FOUNDATION” を20億円さらに拡大し、恵まれないコミュニティの、特に教育、収入、就職にフォーカスするプログラムにすると発表したのです。
2020年コロナ渦で設立されたこの基金は、その10年計画の1部として、主に恵まれない黒人世帯の若者の多い地域を中心に、その地域の経済を助けるために440億円以上を支援しています。

その支援プログラムの1つにMobilize Greenというのがあります。様々なバックグラウンドの若者達に、「Green STEM(science, technology, engineering and math) 」ステム教育を授け、キャリアを築く手助けをするというものです。
https://www.mobilizegreen.org
このようなプログラム支援をはじめ、NBA基金は17件の新規支援も含め、総数で40件もの支援を行っています。
その中で私が気に入った支援は、
the Center for Employment Opportunities (CEO).
https://ceoworks.org
の支援プログラムです。

このプログラムは、刑期を終えて出所してきた若者達のその後のキャリアと生活安定を支援するというものです。米国では、3人の1人の黒人の男性が刑務所行きになり、その確率は17人に1人の白人男性の同じ確率と比較すると非常に高いものです。NBA基金は、セカンドチャンスを与えるだけでなく、コミュニティ全体に、より良い大きな機会を与えられることを望んでいるとしています。

日本の数多いプロスポーツリーグにも参考になるのではないでしょうか。



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マーティ・キーナート

<プロフィール>

アメリカ ロサンゼルス生。1968年スタンフォード大学卒。1969年慶応大学日本語コース修了。以来滞日40余年、一貫して日米を通じたスポーツビジネスに身をおく。2004年「東北楽天ゴールデンイーグルス」の初代ゼネラルマネージャー。仙台大学特命副学長/東北大学特任教授などを歴任。2018年よりプロバスケットボールチーム「仙台89ERS(エイティナイナーズ)」のオーナー代行兼シニアGM就任。   

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