コラム

(16) Update News

 マーティ・キーナート


今回は、以前書いた記事の内容を少しフォローアップしたいと思います。

私のNo.13の「Let’s Help Students with their Student Debt」の記事で、アメリカで最も裕福なアフリカン・アメリカンの一人であるロバート・F・スミス氏は、アトランタ州ジョージアにある歴史的に黒人の男子学生の大学であったモアハウスカレッジの卒業式祝辞にて400人の卒業生の全ての学生ローンを肩代わりすると発表したと書きました。その後日談を少しお話しします。


スミス氏はこの寛大なる申し出の後、さらに2019年の9月20日にはモアハウスカレッジの全ての卒業生の両親に対して書簡を送り、学生ローンだけではなくその両親が学生のために背負っている全てのローンをも支払うと申し出たのです。その総額は実に3400万ドル(約37億円)にものぼりました。


スミス氏は2019年の400人の卒業生に「PAY IT FORWARD」の精神を期待すると伝えました。それは、将来同じようにより良い教育を望みその手助けを必要としている他の学生やその両親に対して、同じように助けてあげられる事のできる人間になるようになりなさいという大きな期待です。私はスミス氏に、大きな「あっぱれ」を送りたいと思います。世界には彼のような人がもっと必要です。


もう1つの記事は、No.14の「Philanthropy Can Sometimes Come with a Price Too Hight to Pay」の記事についてです。この記事で、私は、アメリカのサックラー家と彼らの莫大な資産を生み出していた製薬会社のPurdue Pharma(パーデュ・ファーマ)社について書きました。パーデュ・ファーマ社は、中毒性のある鎮痛剤として悪名高い「OxyContin」を売り続けていました。この薬は米国だけで40万人もの人を1999年から2017年の間に死に至らしめました。


最近では、サックラー家はその罪滅ぼしのためか大きな金額を有名大学に寄附し始めました。ハーバード大、コロンビア大、プリンストン大、コーネル大、マックギル大(カナダ)、キング大(ロンドン)などです。


しかしながら、9月パーデュ・ファーマ社は、全米50州のうち48州とその地元の自治体より2000件にものぼる訴訟を和解するために破産申請を行いました。破産申請の和解事項として彼らは約3300億円の現金、そして約1650億円以上をMundipharma社という子会社を売却して支払う事に合意しました。この和解金額はあまりに莫大なように聞こえますが、しかしながらサックラー一族はその膨大な財産をスイスの銀行に所持しており、多数の海外の口座とペーパーカンパニーを使い、多くの人を死に追いやったオキシコチン薬の売り上げによって得た利益を秘匿していたのです。


さてここで問題は、もしあなたがこのような有名大学の総長で、大学がこの悪名高いサックラー一族からの多額の寄附を受けとっていたとしたらどうしますか?そのままノーコメントのまま使ってしまいますか?それとも相手に返却しますか?もしくは他のチャリティーに寄附しますか?どうしたら一番いいのでしょうか。どちらにしても大きなジレンマになる事でしょう。




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マーティ・キーナート

<プロフィール>

アメリカ ロサンゼルス生。1968年スタンフォード大学卒。1969年慶応大学日本語コース修了。以来滞日40余年、一貫して日米を通じたスポーツビジネスに身をおく。日米両国においてビジネス、プレイヤー双方の実経験から、日米比較や日本の教育システムにさまざまな問題を提起。2004年「東北楽天ゴールデンイーグルス」の初代ゼネラルマネージャー。仙台大学特命副学長/東北大学特任教授などを歴任。   

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