コラム

(7)Fundraising Ideas from Harvard University

 マーティ・キーナート


ハーバード大学は、この7月に5年間のファンドレイジング(基金集め)キャンペーンを終結し、実に960億ドル、約1兆5千6百万円もの寄付を集めたという。これは世界中の大学でもっとも多く集まった寄付金の額である。2013年にハーバード大学がこのファンドレイジングキャンペーンを始めた際、目標金額は650億ドル(約7150億円)であった。これは、スタンフォード大学が2008年から2012年のキャンペーンで記録した620億ドル(6820億円)を抜くための目標であったのだが、ハーバード大学はスタンフォードの記録を4年足らずのキャンペーンでやすやすと追い抜いてしまったというわけである。


このファンドレイジングは、3710億ドル(約4兆81億円)の基本基金を抱えるアメリカで最も豊かな大学をさらに豊かにさせた。もちろん日本でこの規模のファンドレイジングをイメージするのは非常に難しいことではあるが、私はそれでもこのハーバード大学の大きな成功から学ぶことがあると考える。

東北大を始めその他の多くの日本の大学では、ファンドレイジングは様々な学部に分かれてそれぞれ行われているようである。ハーバード大学では、このようなキャンペーンは基金本部でまとめられ、全ての各学部が参加するように企画される。全ての学部長はそれぞれの予算目標をもち、そしてそれを上回る結果を出す事を求められるということである。


この最も多くの基金を集める事ができた今回のハーバード大学のファンドレイジングの成功は、最近引退した前学長のDrew Gilpin Faustのおかげであるという声は多い。彼女が全てのハーバード大学教授とスタッフを団結させ、また全米のみならず世界各地をくまなく飛び回り寄付を呼びかけたのである。ちなみにこのMs,Drew Gilpin Faustはアメリカの歴史学者であり、そしてハーバード大学の382年の中で、初の女性の学長でもある。彼女はまた、1672年まで学長を務めたチャールズ・チャウシー以来となるハーバード大学以外の大学を卒業した学長である。彼女は、そのカリスマ溢れるリーダーシップゆえに選ばれ、そして素晴らしい結果を生み出した。


ハーバード大学は、371,000人もの同窓生をもち、59,000人もの留学生がアメリカ以外の202ケ国から来学している。今回の基金キャンペーンでは、ハーバード大学は、153,000人、173ケ国からの寄附を集めている。さらに言えば、その10%近くはハーバード大学の卒業生ではない。


我々東北大学でも、このハーバード大学の基金キャンペーンから何か学べないだろうか。 まずは、全ての学部長と学部は、力を合わせて1つの目標に向かっていかなくてはならない。次に萩友会を通してもっと同窓会支部を細やかに増やさないといけない。


最後に、我々はただ同窓生の寄附を懇願するだけではならない。この日本有数のすばらしい研究力を持つ東北大学にぜひとも寄附したい方々は、必ず日本にいるに違いないと思うからである。



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マーティ・キーナート

<プロフィール>

アメリカ ロサンゼルス生。1968年スタンフォード大学卒。1969年慶応大学日本語コース修了。以来滞日40余年、一貫して日米を通じたスポーツビジネスに身をおく。日米両国においてビジネス、プレイヤー双方の実経験から、日米比較や日本の教育システムにさまざまな問題を提起。2004年「東北楽天ゴールデンイーグルス」の初代ゼネラルマネージャー。仙台大学特命副学長/東北大学特任教授。

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