コラム

(38) Pandemic Charity Help from Bollywood

 マーティ・キーナート


この原稿を書いている今、日本はコロナウィルスの新規陽性者数の増加を深刻に懸念しています。もちろん懸念すべき事態ではありますが、私はここでこのパンデミックの最中、日本はそれなりによくやっていると褒めたいとも思うのです。日本のコロナウィルス感染者は約839,000例、死亡者は15,027名で、7月15日の時点で世界の中では34番目の感染者数です。

3,500万人近い人が感染し、60万8,000人以上の死者を出している米国に比べれば、日本の数字ははるかに少ないものです。そして現在、米国に次いで感染者数が多いのがインドです。インドは3,100万人以上の人が感染し、54万人もの死者数はブラジルに次いで世界第3位になってしまいました。
多くの国では、このコロナウィルスとの闘いのために有名企業や実業家たちが巨額の寄附付を行なっています。しかし私はインドの映画業界、称してボリウッド(BOLLYWOOD)で最も有名な俳優の一人であるソヌ・スード(Sonu Sood)氏がインドでこのパンデミックと闘っているトップリーダーの一人であるという事に興味を抱きました。彼のホームページを見ると、彼が現在インドが直面している問題に非常に大きな影響を与えている事がわかります。

ソヌ・スード氏のホームページ:https://soodcharityfoundation.org

彼個人のチャリティ基金は、400万食以上の食事を18,000以上の家庭に支給するほか、薬や酸素、入院施設の手配など、あらゆる手立てをコロナ患者に届ける手助けを続けています。
しかし彼の慈善事業のうちでも特筆すべきは、コロナで両親をなくしたインドの子供達のために無料の教育を受けさせるというキャンペーンを行っている事でしょう。
彼は、1999年に俳優としてのキャリアを始めた頃から、慈善事業に熱心に取り組んできました。中でも無料での教育の提供は彼の活動の中でも大きな使命の1つです。その中では、会計士になりたい生徒に無料の教育を授けるというプログラムもあります。また、公務員の試験を受けたい生徒に無償の奨学金を与えるものもあります。

もしかしたら一人の俳優にそんな大きな経済的な影響を与えることができるのかと訝る人もいるでしょう。しかしボリウッドは、ハリウッドに勝る巨大な一大産業なのです。
その中の人気俳優は、ハリウッドスターと負けないぐらいの収入があります。ソヌ・スードは、1本の映画で10億円以上は稼ぎます。そして彼はそのお金を本当に助けを必要としている人々に分け与えているのです。

ロックダウンで立ち往生している人々にバスをチャーターしスラム街に毎日の食事を届け、インドで切り捨てられようとしている最も貧しい人々に手を差し伸べている彼は、この混沌とした世の中で人々を救うスーパーヒーローとなっているのです。
なんとも素晴らしいお手本ではないでしょうか。



**************

マーティ・キーナート

<プロフィール>

アメリカ ロサンゼルス生。1968年スタンフォード大学卒。1969年慶応大学日本語コース修了。以来滞日40余年、一貫して日米を通じたスポーツビジネスに身をおく。2004年「東北楽天ゴールデンイーグルス」の初代ゼネラルマネージャー。仙台大学特命副学長/東北大学特任教授などを歴任。2018年よりプロバスケットボールチーム「仙台89ERS(エイティナイナーズ)」のオーナー代行兼シニアGM就任。   

**************

コラム一覧
       

menu