創立と100周年


100周年記念事業準備委員会委員長
馬渡 尚憲=文
text by Shohken Mmawatari

 東北大学は、1907年(明治40年)6月22日に日本で3番目の帝国大学として仙台に創設されましたので、4年半後の2007年には創立100周年を迎えることになります。この間多くの研究と教育の成果、並びに我が国の発展を支える、多様で創造性あふれる逸材を日本と世界に向けて送り続けてきました。仙台市民との関わりも極めて深く、市民の10人に1人は何らかの形で本学との接点があると言われています。
 本学の創立時の逸話ですが、東京帝国大学についで京都帝国大学が設立されました。次をどこに作るのかが国会で審議され、仙台に東北帝国大学を、福岡に九州帝国大学をという満場一致の建議書が出されました。仙台には、旧制二高がありましたし、宮城県、仙台市、それに『河北新報』をはじめとする地元の熱心な運動がありました。宮城県は、政府の要望で35万円の寄付を行うことを決めましたし、仙台市も大型陳情団を派遣して政府に働きかけました。ちょうど100年前になりますが、国会で東北大学設置だけのための建議書も出されました。しかし、政府は財政難のなかで、専門(高等)学校が先という方針を取りました。設置の動きはいったんは下火になったのですが、4年後、内務大臣原敬が古河鉱山の古河家の寄付を取りつけ、一転して政府も乗り気になり、一気に翌年明治40年6月22日の勅令公布にまで至りました。
 東北帝国大学は、古河家の寄付26万円(理科大学新営費)、宮城県の寄付15万円(内部設備費)、計41万円で設立され、結果的に国費なしで創設されたのです。文部省は人件費・渡航費を負担するほか、図書費・機械備品費など六年間で約10万円の補充をしております。
 このように、民間と宮城県の御支援により設立された経緯は、地域とのつながりが重要なファクターとなる東北大学のあり方を示唆しています。今度の100周年記念事業も、「地域に開かれた大学」や地域との交流をねらいとした「ユニバーシティ・パーク」という構想と一体であり、地域を見据えた基本構想を掲げております。例えば、川内構内の千貫沢や記念講堂周辺を整備して市民の憩いの場にするほか、記念会館にも市民交流室を設けるなど、計画全体に、本学の知的資源を市民と共有していくという精神が流れております。
 このほか、今後の研究教育のための財政基盤を作ること、東北大学100年史の刊行、記念建造物の建設、国際シンポジウムなどの記念事業の実施など盛り沢山の事業を予定しております。
 東北大学は100周年と国立大学の法人化を迎え、新たに世界でトップクラスの学術研究と教育システムを駆使し、地域貢献はもとより、日本、世界に貢献すべく努力をして参ります。これには、本学関係者はもとより、一般企業や仙台市民の温かい励ましとご支援・ご協力が素晴らしい追い風となることを確信しております。今後とも東北大学を応援してくださるようお願い申し上げる次第です。


まわたり しょうけん

1938年生まれ
現職:東北大学副総長・
   経済学研究科教授
専門:経済学史



I N F O R M A T I O N
東北大学附属図書館・平成14年度企画展
公開市民講座 自然史講座
「スコラボタニカ」

「江戸の終焉〜黒船・開国〜」
●内  容:江戸時代末期、幕府の衰退と倒幕運動、
      黒船来航と開国に揺れる日本を附属図
      書館が所蔵する多数の貴重資料に基づ
      き紹介
●開催期間:10月29日(火)〜11月7日(木)
      10:00〜17:00
      (10月29日(火) は14:00から、
       11月7日(木)は16:30まで、土曜・
      日曜・祝日も開催)
●会  場:東北大学附属図書館
●問合せ先:(仙台市青葉区川内・
        tel022-217-5911)
      http://www.library.tohoku.ac.jp/

第8回 11月16日(土)
   「生活環境を守る森や草原」
     理学研究科附属植物園 内藤 俊彦
●午前10時30分開演
●定員:各60名
●受講料:無料(ただし、入園料220円必要)
●会場・問合せ先:理学研究科附属植物園・
         公開市民講座係
 (仙台市青葉区川内/tel022-217-6760)
http://www.biology.tohoku.ac.jp/garden/

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