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インタビュー

小柳 光正(こやなぎ みつまさ)教授
2007年冬発行号(第6号)掲載 東北大学大学院工学研究科 バイオロボティクス専攻 小柳 光正(こやなぎ みつまさ)教授


「未来を見据えた研究」2006年米国電気電子学会 西澤メダル受賞

IEEE Jun-ichi Nishizawa Medalについて

the leading edge |  IEEE Jun-ichi Nishizawa Medal 西澤メダル授与母体である Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.(通称 IEEE、米国電気電子学会) は150ヶ国、36万5千人の会員を擁する、世界最大の技術専門国際学会です。電子工学、情報科学、コンピュータ、通信、家電、ロボット、電力、航空宇宙システムからバイオテクノロジー、ナノテクノロジーまでの広い分野をカバーしており、年間300以上の国際学会を開催しています。また、世界で発行されている電気電子工学・情報科学関連の文献の3割以上の発行に関わるとともに、900件以上の業界標準規格を開発しています。
 IEEE本部管掌の表彰にはMedals, Technical Field Awards, Corporate Recognitions, Service Awards, Prize Papers, FellowshipsとStaff Awardsがあり、 Medalはその中で最上位の顕彰となります。現在、13種類のメダルが設定されており、その内の7つが主要専門分野における顕著な貢献に対して贈られるメダルとなっています。エジソンメダルと並んで西澤メダルもその内の一つです。
the leading edge |  IEEE Jun-ichi Nishizawa Medal 西澤メダルは、西澤潤一首都大学東京学長(元東北大学総長)の半導体基礎材料、デバイスから光通信、電力システムにおよぶ幅広い業績を称えるために、2002年に創設されたもので、「材料とデバイス科学技術または応用への多大な貢献」を受賞対象としています。選定には、技術レベルの他に、技術分野の発展、インパクト、社会への貢献などが評価されます。受賞者には、金メダル、銅製レプリカ、表彰状および賞金が授与されます。第1回目(2004年)の受賞者は、半導体レーザーとゲルマニウムの高速ICを開発した Dr. Frederick H. Dill(IBM、現在HGST)、第2回目(2005年)の受賞者は、ガリウム砒素/AlGaAsシステムの液相エピタキシャル法とその応用について顕著な業績をあげたDr. Jerry W. Woodall(Yale大学、現在Purdue大学)でした。第3回目(2006年)が半導体メモリ(DRAM)の基本技術を開発した小柳光正教授、角南英夫教授(広島大学)、伊藤清男博士(日立製作所フェロー)の共同受賞です。


小柳光正 教授 IEEE西澤メダル受賞
記念講演会・祝賀会パンフレット より

受賞対象となった小柳教授の業績

小柳教授は半導体集積回路の黎明期から半導体素子の研究を開始し、高集積・大容量半導体メモリであるDRAM(Dynamic Random Access Memory:再生動作が必要な随時書き込み・読み出しメモリ)の基本素子となる3次元スタックドキャパシタ型メモリセル(Stacked Capacitor Cell:積み上げ容量型メモリセル)を発明している。DRAMはマイクロプロセッサと並んで長いことLSIの発展に対する先導的役割を果たしてきた。特に、1980年代の後半から1990年代の半ばにかけては、我が国の半導体産業はDRAMで支えられ、史上空前の経済的繁栄を遂げる。そのため、DRAMは産業の米とまで言われるようになる。このようなDRAMに用いられている基本メモリ素子が3次元スタックドキャパシタ型メモリセルである。3次元スタックドキャパシタ型メモリセルは全世界のDRAMの80%以上に採用され、これまでの売り上げ高は20兆円を超える。スタックドキャパシタDRAMやマイクロプロセッサによって先導されたLSIの進歩はコンピュータや通信技術をも飛躍的に発展させ、高度情報化社会をもたらす原動力となっている。
 3次元スタックドキャパシタ型メモリはDRAM以外の半導体集積回路技術の進歩にも多くの貢献をしている。小柳教授が3次元スタックドキャパシタ型メモリセルで初めて採用した高誘電率薄膜は、DRAM以外にも微細MOSトランジスタの高誘電率ゲート絶縁膜として世界中で精力的に研究が行われるようになっている。また、最近、フラッシュメモリに代わる高速不揮発性半導体メモリとして、注目されている強誘電体メモリ(FeRAM)や相転移メモリ(PRAM)、磁気メモリ(MRAM)は全て3次元積層構造となっており、3次元スタックドキャパシタ型メモリセルの考え方が取り入れられている。
 このように、3次元スタックドキャパシタ型メモリ技術はDRAMだけではなく、半導体集積回路技術全体の発展に広く貢献しており、その功績は国内外から高く評価されている。このことは、2004年12月に米国で開催された半導体技術の殿堂とも言える IEEE International Electron Devices Meeting(国際電子デバイス会議)の50周年記念会議において、日本人としての最初の歴史的論文として小柳教授の3次元スタックドキャパシタ型メモリセルに関する論文が展示されたことからも伺える。


小柳光正 教授 IEEE西澤メダル受賞
記念講演会・祝賀会パンフレット より




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