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インタビュー

                    

先駆するフロンティアの大学で学んだ誇りを胸に――

福島 理恵子(ふくしま りえこ)
2013年9月更新 株式会社東芝 デザインセンター戦略デザイン推進部参事 福島 理恵子(ふくしま りえこ)

世界で初めて専用眼鏡なしで3D映像が見られるテレビ(グラスレス3DレグザTM)の開発を担当された、福島理恵子さん。この業績で日経WOMANウーマン・オブ・ザ・イヤー2011、科学技術分野文部科学大臣表彰科学技術賞など多くの賞を受賞。東北大学が国立大学で初めて女子学生を受け入れて100周年を迎えた本年2013年、その記念シンポジウムで講演をされた機会に、これまでの軌跡や仕事観について語っていただいた。

ユーザー(顧客)の体験価値を重視した、製品づくり

卒業した95年に東芝に入社し、最先端技術に取り組む研究開発センターに配属。当初は、液晶関連の研究にたずさわった後、裸眼3Dディスプレイの開発を担うことになりました。さまざまな制約の壁を乗り越え、3D元年と注目された2010年冬にテレビとして製品化。メガネをかけずに3D映像が見られるテレビは世界初だっただけに、反響は大きかったです。


昨年の12年秋からデザインセンターに転属になり、現在はユーザー視点にたった製品開発のありかたを検討しています。これまでの製品づくりは技術を基点に、機能の高さで勝負していました。今取り組んでいるのは、「ユーザーにどんな体験価値を提供できるか」を考えて、それに基づき製品やサービスを具体化するような取り組みです。


デザインセンターのメンバーは元来ユーザー志向なのですが、技術力やコスト、納期などの制約が厳しく、ユーザーの想いが後回しになることもありました。ユーザー視点にたつことで、ユーザーが製品やサービスを通じてどのような体験をして欲しいかをまず考え、理想的な体験を提供するために技術やコストを工夫する、というように、検討の順序が逆転します。例えば医療現場で、高性能なCTスキャンではなく、子どもが怖がらないCTスキャンにするにはどうすべきか、と考えていくわけです。コストをないがしろにすることはできませんが、ユーザー視点で考えることで、コストをかけても取り組むべき課題が見えてきます。最終的には、東芝らしい体験価値を創造して提供することをめざしています。


学んだことは課題設定、説得力ある実証の重要さ

東北大学理学部に入学してみて、授業は正直、難しかったです。落ちこぼれぎみながら、何とかついていくためだけに勉強していました。そして、4年になって配属された講座で、夜通し勉強や研究をしている先輩方に出会いました。偏差値とネームバリューで大学を選んだ自分と違って、東北大学の○○先生に学びたいという目標をもって東北大学へ来て、時間を惜しんで研究している・・・そういう姿に憧れ、自分もそういう人間になりたいと、大学院に進むことを決めました。


その講座の先輩たちは、親切にも院試の勉強を定期的に教えてくれました。人生で一番勉強したのはこの時だと断言できます。それで何とか、第二志望の研究室に入ることができました。


大学の学びを振り返って糧となったと思うのは、研究における課題設定とアプローチの仕方、そして、その結果を他人に説得できるようなデータを添えて学会発表する、といった一連の作業です。この一連の作業は社会人になっても役に立ちました。課題設定はもちろん、自分が得た結果に、実証性を持たせることは、仕事でもとても大切です。


就職してから、あらゆる仕事に真面目に取り組み成果をあげる東北大卒のOBに会う機会が何度もあり、在学中にも増して東北大学を誇らしく思う機会が多いです。つまり自分は、卒業後も東北大学に助けられていると思います。東北大学には、学生をしっかり、いや、おせっかいなくらい丹念に育てあげている印象があります。

新しいことをするということは、道無き道を行くことです。東北大学は開拓者精神を尊ぶ大学ですから、次世代の皆さんも大いに頑張って、道無き道を切り開いていってほしいです。


男女がいきいきと、のびやかに生きていくために

今年は「東北大学女子学生入学100周年」ですが、そういう先駆的な大学に入学できたことを嬉しく思います。私は理学部で学びましたが、女性のハンディはなかったです。むしろ、就職を検討した時に、就職氷河期だったこともあり、女性研究者を採用する企業がなかなか無くて困りました。友人に誘われて参加した東芝の説明会で、分け隔てなく扱われることに感動し、さらに就職しても東芝が、女性が働き続けやすい企業であったことは幸いでした。


研究者として成果を出していくことに、迷いがなかったわけではありません。ちょうど30歳の時に出産・育児で休職した1年間は、自分自身と進むべき道を見直すいい機会になりました。復職して以降、実際、子育てのために定時過ぎには帰社するようになりましたが、逆に、優先順位をつけて効率よく仕事ができるようになったように思います。そして、優れたリーダーや仲間との出会い、そして、3D元年というタイミングなど、諸条件が重なったからこその、2010年の製品化だったと考えています。


女子学生入学100周年シンポジウムにて(2) 女子学生入学100周年シンポジウムにて(1)

今、日本経済には閉塞感があります。その一因として、男性の働き過ぎがあると思っています。男性は一般に多くを背負いすぎて、振り返る時間も不足しているし、またリスクの大きな提案もできにくい状況です。

ちなみに、私たち夫婦は研究者同士ですが、かつて夫は定職を棄てて流動研究員になり、チャンレンジしたことで最終的に希望の職を得ました。「あなたが仕事をしていたから、チャレンジできた」と言ってもらえたことが、とても嬉しかったです。男性がリスクの大きな仕事に取り組む余裕をつくるためにも、女性が力になれます。お互いに能力を発揮して、いきいきと生きていける。それが男女共同参画社会のあり方だと思います。


1971年東京都生まれ。93年東北大学理学部化学第二学科卒業後、同大学院理学研究科化学専攻修士課程を95年に修了。同年に東芝入社。研究開発センターにて、液晶の配向メカニズムを研究後、裸眼3Dディスプレイの研究開発に従事。05年「第57回神奈川県発明考案展覧会/川崎市長賞」「日本光学会/光設計優秀賞」、07年「映像情報メディア学会/技術振興賞 開発賞」、10年「発明協会/全国発明表彰21世紀発明賞(第二表彰区分)」11年「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2011」大賞を受賞。12年より現職。




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