令和5年度受賞者についての報告
この度、第10回澤柳記念DEI賞の結果が次項のとおり決定しましたのでお知らせいたします。下記のとおり、授賞式と受賞講演を行います。
・授賞式:9月30日(土)
東北大学116周年ホームカミングデー~女子大生誕生110周年・文系女子大生 誕生100周年記念式典・記念講演~で行います。
・受賞講演:未定(詳細が決まり次第お知らせいたします。)
A賞:澤柳記念DEI賞
課 題 名 科学技術・教育分野のジェンダー平等推進
受 賞 者 山形大学学術研究院教授 河野 銀子 氏
受賞理由 教育社会学を専門とする河野銀子氏は、女性が少ない分野の現状把握・要因分析によるジェンダー平等を推進するための先駆的な基礎的研究を多分野の多彩な研究者と協働して行う。量的手法と質的手法を組み合わせるミックスメソッドにより、特に女性校長、女性学長、女性研究者のキャリア形成の実態とその困難および超克を描き出し、実践的な改善策を提示している。このように男女共同参画、DEIの分野の専門家として調査とエビデンスに基づいた実証的な研究実績を十分に重ねるのみならず、それに基づいた実践的な解決策を氏は出版、講演、メディアを通して社会に発信している。日本がOECD加盟国の中で科学技術・教育分野のジェンダーギャップが大きい国であり、世界経済フォーラムによるジェンダーギャップ指数で日本は125位とワースト記録を更新しその要因として高等教育におけるジェンダーギャップが指摘されているとき、四半世紀にわたり大学のジェンダーギャップの課題を追求する氏の研究は真に大きな意義を持つ。 こういった氏の研究の成果は本務校の山形大学や近隣大学における教育にも十二分に活かされ、その研究を基にして大学運営にも長年にわたり堅実な貢献を果たしてきた。さらに市県レベルのみならず国レベルでの実証的な研究に基づいての政策立案等にも幾度も寄与しその貢献は大である。そして国際的にも国連大学、アメリカやイギリスの教育学会、国際会議Gender Summit、STEMの女性リーダーサミット等で発信を重ねている。 このように研究、教育、大学運営、県レベルでの社会貢献、国レベルの政策への貢献、国際社会での発信といった各観点に於いて大きな実績を有し、以てジェンダー平等とDEIを強く推進する河野銀子氏はまことに本賞に相応しく、ここに顕彰する。
B賞:澤柳記念DEI奨励賞
課 題 名 周作人の女性解放運動の体系化に向けた研究
――生涯にわたる言論運動とそれを支えた国際的知見の所在――
受 賞 者 東北大学大学院国際文化研究科 博士後期課程 張 蕊 氏
受賞理由 近代中国の代表的文筆家・周作人が生涯にわたって取り組んだ女性解放運動の全体像を極めて体系的・網羅的に考究する。それは、日本よりも格段に早くDEI推進や男女共同参画が論じられた中国という視座や、日本留学した周作人に影響を与えた西洋化された日本や欧米の思想家という視座も有した、壮大でグローバル且つ緻密で実証的な歴史学研究であり大きな意義を有する。 現在の日本社会で男女共同参画やDEIを考えそれを確実に推進・実現する にあたって、過去の人々や社会の実相を知りそれを踏まえることが求められるとき、その基盤としてアカデミアから社会への具体的で大きな影響源として本研究のような優れた歴史学的研究は必須である。実際、周作人の運動が1950年の中華人民共和国婚姻法の条文に反映されていると本研究は指摘する。また周作人が清代、中華民国時代、満州国時代・日中戦争時代、そして中華人民共和国時代という社会の大激変をいき抜きつつも女性解放運動を応変させて貫徹したことは、激動する現代社会でのDEI活動に大きな示唆を与える。 ゆえにこの汗牛充棟たる史料に取り組んだ濃密で重いアカデミックな研究成果は、まさに東北大学の澤柳記念DEI奨励賞に相応しい。本賞受賞が今後のさらに長く重い研究を重ねていく励みとなることを期待する。周作人が本学と縁のある魯迅の弟であったことも趣深い。これらの功績は顕著でありここに顕彰し、今後の一層の活躍を期待する。
B賞:澤柳記念DEI奨励賞
課 題 名 セクシュアルマイノリティへの理解促進および当事者の居場所づくり
受 賞 者 北海道大学LGBTQ+サークル 虹の集い
受賞理由 2016年に設立され2019年からは北海道大学公認の学生主体のサークルとして、LGBTQ+に関する例会「つどい」や映画上映会、トークイベント、講演会、親睦会、さらにはオンラインの利点を活かした例会など、質の高い啓蒙活動を極めて精力的に定期的に繰り広げている。 学生によるこの先進的な取り組みは、所属する北海道大学の枠を超えてその外にも展開して、自治体や高校、その他の団体と連携しながらオンラインやメディアによる紹介をも通じてその活動範囲を北海道内外や海外在留者にも拡げ、その対象も日本の大学生だけでなくアメリカの大学生、在札幌米国総領事や高校生、教員なども交える。こういった交流・啓蒙活動の社会的意義は大変に大きい。 DEI推進に関するこのような極めて多彩で且つ親しみやすい、波及効果と インパクトの大きいこの活動が今後も継続し、更なる企業や他大学との協働等の展開をも遂げることに大きな期待を抱く。これらの功績は顕著でありここに顕彰し、今後の一層の活躍を期待する。
公募情報 ※令和5年度公募は終了いたしました※
応募資格
・東北大学の内外に関わらず、個人、グループが対象です。・本賞に相応しい個人、グループを自薦・他薦できます。
・過去に受賞しなかった申請も再度提出可能です。
種類
A:澤柳記念DEI賞DEIに関する研究や活動のほか、多様な属性を持つ人たちのさらなる活躍につながる活動について、特段に優れた成果を挙げている個人又はグループ
B:澤柳記念DEI奨励賞
DEIに関する研究や活動のほか、多様な属性を持つ人たちのさらなる活躍につながる活動について、優れた成果を挙げているまたは今後一層の成果や活躍が期待される、若手(42歳以下)の個人又は若手を代表としたグループ
・受賞は上記A、B各1件を基本とします。
・上記AとBへの重複応募・推薦はできません。
・受賞者(受賞グループ)には、後日、受賞講演を行っていただきます。
応募締切
令和5年7月12日(水)(7/24に締切延長、今年度は締切ました。)
公募要領・推薦書
下記公募要領をよくご確認の上、ご応募ください。過去の受賞者
令和4年度 | 講評 | A賞 | 該当なし | |||
B賞 | 該当なし | |||||
令和3年度 | 講評 | A賞 | 大阪市立大学女性研究者支援室 | |||
B賞 | お茶の水女子大学ジェンダー研究所東アジアにおける政治とジェンダー研究チーム共同研究者・Stand by Women代表者 | 濵田 真里 氏 | ||||
令和2年度 | 講評 | A賞 | 東京農工大学 | 副学長 | 宮浦 千里氏 | |
B賞 | 該当なし | |||||
令和元年度 | 講評 | A賞 | 広島大学 | 副理事・副学長 | 相田美砂子氏 | |
B賞 | 埼玉大学 みんなのトイレプロジェクト | |||||
平成30年度 | 講評 | A賞 | 九州大学研究戦略委員会 | |||
B賞 | 大阪府立大学理系女子大学院生チームIRIS | |||||
平成29年度 | 講評 | A賞 | 三重大学 | 名誉教授 | 小川眞里子氏 | |
B賞 | 国際医療福祉大学成田看護学部 | 助教 | 古山陽一氏 | |||
平成28年度 | 講評 | A賞 | 名古屋大学男女共同参画室 | |||
B賞 | 該当なし | |||||
平成27年度 | 講評 | A賞 | 日本大学薬学部・薬学研究所 | 上席研究員 | 大坪久子氏 | |
B賞 | 新大Wits(しんだいうぃっつ) | |||||
平成26年度 | 講評 | A賞 | 明治大学法科大学院 | 教授 | 辻村みよ子氏 | |
B賞 | 輝友会(エスエーきゆうかい) |