−化石シリーズ 第3回−
「アンモナイト」


 アンモナイトは、4億1千万年前に始まる古生代デボン紀から6500万年前までの中生代白亜紀にかけて、3億年以上にわたって海に繁栄した生物の一つです。分類上は、イカやタコと同じ頭足類に含まれますが、らせん状に巻いた硬い殻を持っているのが特徴です。これまで1万種以上知られ、我が国においても、北海道から沖縄まで、多くの地域で化石として産出します。
 アンモナイトという名前は、「アメンの角」という意味を持っています。古代エジプトの古都テーベ(現在のルクソール)の守護神アメンは、雄羊の頭をもった姿として描かれていたため、アンモナイトの化石はその角にふさわしいと考えられたことに由来します。
 アンモナイトには、直径2、3cmの小さいものから2m以上に達する巨大なものまで、その大きさは種類によってさまざまです。その殻の表面には、縫合線と呼ばれる曲線模様が刻まれ、一つの生物が作ったとはとても思えないような見事な装飾を観察できます。
 かつて太古の海に栄えたアンモナイトも、恐竜や魚竜とともに中生代末期(今から6500万年前)に絶滅し、地球上から姿を消しました。表紙の写真は、本学収蔵の英国から産出したジュラ紀アンモナイトの一種です(倍率0.7倍)。

(総合学術博物館長 森  啓)