多彩なリテラシー1 石碑拓本の世界
「祖師在法性古像」

東北大学附属図書館蔵「祖師在法性古像」
撮影:大野晃嗣
撮影協力:渡辺健哉

 宮城県出身の仏教学者・常盤大定 は中国において史蹟調査を実施し、数多くの石碑・石刻を拓本に採りました。そのコレクションは常盤氏他界後の一九五〇(昭和二十五)年、東北大が購入し、今なお附属図書館に収蔵されています。
 表紙の写真はその中の一つで、中国広東省広州市の光孝寺に立つ石碑の拓本です。この碑は元の時代(十四世紀)に時の住職・慈信が建てたもので、描かれているのは唐代の禅僧・六祖慧能です。南宗禅の祖とされる慧能は、日本に伝来した禅宗諸派においても、その源流として大変とうとばれている人物です。見習い僧の身分で禅宗の正統な後継者となった彼は、光孝寺で頭を丸め、正式に出家したと言われます。首の肉が落ち、あばらが浮いた本像は、彼が十五年にわたる山中隠棲を経て光孝寺にやって来たとの伝承にもとづくものでしょう。
 碑の上部には、石碑が建てられる約三十年前に、当時の住職であった宗宝が作った賛(絵画に添える詩)が刻まれています。彼は一般に、慧能の言行録である『六祖壇経』を再編、再刊したことで知られる人物です。光孝寺の歴代住職は、ゆかりの高僧である慧能の語録を刊行し、像を描きそれを石に刻むことで、その輝かしい伝統を宣揚したのでしょう。石碑という異なった媒体とあわせ見ることによって、書物の出版背景がいきいきとよみがえる、これもまた読書の喜びなのです。

東北大学文学研究科准教授
齋藤 智寛
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|編|集|後|記|
法学部の教員として東北大学に赴任してから、この春で四年目を迎えます。「自分が大学生であったとすれば、もう卒業の年か…」と思うとため息が出ますが、三年前に不安げな顔で入学してきた学生さんが、さまざまな知識や経験を身につけ、精神的にもすっかりたくましくなって、ゼミ等で下級生を牽引している姿を見ると、大変たのもしく思います。もちろん、四年間(一部の学部では六年間)の大学生活で何を得るかは人それぞれで、大学という研究・教育機関でどのように自分を高めていくかも、個々の学生の自主性に大きく左右されます。本誌の編集委員を担当して一年が経ちますが、さまざまな学部・研究科の個性あふれる先生方が魅力的な研究・教育を行っていることを(改めて)知ることができ、大変貴重な経験をさせていただいております。私自身はどうなのか、同じくらい魅力的なものを学生に提供できているだろうか、と思うとさらにため息が出ますが、いろいろな面で恵まれた環境(まなびの杜)のもと、学生さんともども、努力を続けていきたいと思っています。
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