中善並木
若き日の友情と感激の証

 東北大学入学は一九六〇年、年初から安保改定問題で世情は騒がしく、入学早々待ち受けていたのは安保反対の学生運動でした。早速連日デモ行進に駆り出され、授業放棄やキャンパス封鎖など、六月半ば安保条約批准が国会で自動承認されるまでは学業も思うように進みませんでした。そんな中で出会った仲間との付き合いも半世紀を越し、二〇一〇年四月に五十数名で入学五十年の集いを行いました。集合場所は川内南キャンパスの中善並木です。
 この並木は、私たち法学部一年生が大学祭に模擬焼鳥店「法一亭」として参加するに当たり、当初「知性なし」と却下されましたが、中川善之助先生のお力添えで日の目を見、結果的にかなりの収益が出たのをもとに植樹したものです。初めは現在の川内北キャンパス内に欅並木とする計画でしたが、手入れ不十分でうまくゆかず、数年後に諸先輩からの資金援助を頂いて現在地に桜並木として植え直しました。大学当局の了承を得て「中善並木」と命名され、中川先生の揮ごうによる「若き日の友情と感激のために」という碑を建立しました。川内萩ホールや川内キャンパスにおいでの際に一寸足を延ばしてホール駐車場入り口脇をご覧ください。
 この言葉は、春秋に富む大学生活を見事に言い当てており、末永く東北大学学園生活のシンボルとして語り継がれることを願っています。現在の大学祭は模擬店花盛りですが、部活動の資金確保の色合いが濃く、同期生の団結や遊び心からは一寸距離があるように感じています。

公器としての人材育成と就職援助

 私たちの頃は二年次の途中から専門教育がはじまりましたが、それまでは教養部としてさまざまな学問の入り口を覗き、それらが人間形成の肥やしとなりました。現在、教養部は廃止されましたが、新しい国立大学法人として独自色を求める中で、全人教育をより濃くする工夫を考えていただきたいと願っています。ここ数年同窓会の運営を通して大学と関わっていますが、最近の文系就職状況を見るにつけ、大学院教育が多様化したことと相まって、学部卒就職について、①企業志望者が減少している②「東北大学」というブランドに頼り過ぎて「東北」という地の情報戦での不利が軽視されている③人材を送り出すのに学生の就活に任せ過ぎている④このままでは熾烈な就職競争に後れをとり結果的に優秀な新入生の確保にも支障を来すことになりはしないか、と危惧しています。
 確かに組織上は就職支援センターがあり、ホームカミングデーでの就職相談会も行われています。法学部でも同窓会と共同で各界の先輩を招いての「進路を考える集い」を実施していますが、各界の次代のリーダー候補を送り出す「公器としての大学の役割」から、学部教員および事務方との連携を密にした就職支援援助体制の確立が必要ではないかと思います。

清水 廣行(しみずひろゆき) 清水 廣行(しみずひろゆき)
1941年生まれ
出身学部/法学部
現職/東北大学法学部同窓会事務局長
関連ホームページ/
http://www.law.tohoku.ac.jp/dosokai




ページの先頭へ戻る

前頁へ 目次へ 次頁へ