―現在進行形のチャレンジライフin仙台―太田耕平

 私が東北大学に入学したのは平成元年、学部時代は当時のいわゆる不真面目な学生として過ごしましたが、転換点となったのは4年生の時の研究室所属でした。講義を聴くという受け身の勉強とは異なり、自分で新しく何かを考え試して行く積極的なスタイルはとても新鮮で楽しいものでした。この時期の先生方や研究環境との出会いがなければ、現在の私はありません。
 当時はインターネット黎明期でしたが、東北大学の学内ネットワークであるTAINSはその最先端の環境をすでに備えており、私の所属した大型計算機センターは、その運用と研究を担う、今思っても贅沢な研究環境でした。その場所で研究活動とインターネットの面白さに魅せられた私は、博士課程への進学も認めてもらい、卒業後はお世話になった先生方を中心に立ち上げられたベンチャー企業で、研究成果の事業化に力点を移しながら、4年生以来の研究テーマであるインターネットの運用管理とセキュリティ技術の向上に取り組んでいます。
 4年生以降の私は、どういうわけか常に新しい何かを始める立ち上げの場に係わってきました。配属研究室では恩師根元教授の最初の4年生の一人でしたし、携わることになったインターネット分野は一般には知られていない新しい分野でした。進学した情報科学研究科でも初年度の学生でしたし、卒業後のベンチャー企業でも設立メンバー社員の一人でした。
 新しい何かを立ち上げて行く時、そこにはいつもアグレッシブな独特の熱気があります。その中で、無限の可能性を感じつつ、その可能性と対峙しながら研究や仕事に取り組むことは、何ものにも変えがたい貴重な経験です。例えば、大学院生として進学した新設の情報科学研究科は、急速に発展するインターネット技術を研究するのに正に最適な場所で、発展しつつある、生のしかも最先端の技術に直に触れながら積む経験は、技術の黎明期の他に先駆けた研究からしか得られないものです。また、研究室では、当時はほとんど知られていなかったインターネット技術の標準化の場であるIETFに参加する機会が与えられ、世界中から集まった研究者が対等に議論を重ねると同時に、その成果が実際に動くシステムとして次々と世に出る現場を経験できました。
 現在、私の属するベンチャー企業は、先生方のご指導や学生たちとの議論を通じて挑戦を継続し、10年目を迎えています。今では、学生たちも国際会議などの世界的な場で当たり前のように発表するようになり、挑戦自体も大学というフィールドのみならず、企業・自治体を巻き込んだ規模の大きな物に発展して来ています。私自身、今も続く大学での温かいご指導に感謝しつつ、研究・行政・事業などのさまざまな立場の人々が協力し、世界に貢献できる新しい技術や産業を生み出す創造的活動を今以上に発展させて行くことを使命と考え、先人の成果にさらに何かを付け加えられるよう努力して行きたいと考えています。


INFORMATION in '08 Spring

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