片平キャンパスの正門を入ってすぐ右側に、大学院生命科学研究科本館があります。その正門脇に、仙台市の保存樹に指定されている樹齢約225年の大イチョウが風格ある佇まいを見せています。秋になると、黄金色に色づいた大イチョウが、本館西側の表玄関前に佇む旧制第二高等学校の記念碑を覆う真紅のモミジとともに、すがすがしい秋を感じさせてくれます。
 さて、多くの植物は、ひとつの花にめしべ・おしべを持つ両性花を着生します。しかし、おしべを持たない雌花とめしべを持たない雄花を別々に咲かせ、雄花と雌花を同じ株に着生する植物や、イチョウのように雄花と雌花を別々の株に着生する植物もあり、これらは両性花を着ける植物から進化したと考えられています。雌株と雄株に分かれている植物では、ヒトと同じように性染色体が雌雄性を決定する場合が知られていますが、イチョウでは明確な性染色体がみられません。本学理学部教授であられた小野知夫先生によると、ひとつの株に雄花と雌花を混在させるイチョウが、岩手県東和町や仙台市荒町で発見されているそうです。
 2世紀以上に渡ってこの地の変遷を見守ってきた大イチョウは雄株で、本館のテニスコート脇にあるイチョウは雌株です。風によって運ばれた雄株の花粉が雌株のめしべに落ちて受粉し、テニスコート側のイチョウはたくさんの銀杏を結実します。ここに銀杏拾いの姿をみると、もうすぐ冬到来です。

高橋 秀幸
(生命科学研究科教授)



 

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『まなびの杜』は3月、6月、9月、12月各月月末に発行する予定です。
『まなびの杜』編集委員会委員(五十音順)
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編集後記

 もう数年前になりますが、中国で開催された国際会議に出席したとき、中国側主催者の企画で、黄山を訪れる機会がありました。ご存知のように、黄山は、「黄山を見ずして山を語るなかれ」といわれ、中国でもっとも美しい山として知られています。その山水画のような景色には、なるほど、この山があって、山水画があるのだなと、いたく感心しました。しかし、ここまでは、予想の範囲です。
 意外にも、この登山でもうひとつ感心したことがあります。それは、黄山の峰々に張り巡らされた登山道です。場所により幅は異なりますが、険しくないところでは幅は広く、石組みも精密で、しっかりと組まれています。このような石段の道が、峰々を縦横に結んでいます。このような整備の行き届いた登山道を、私はそれまで見たことがありませんでした。
 そのとき、誰かが言いました。「青葉山にもこのような道を作ったらどうだろう」。日本の他大学の先生の発言でした。私も心のなかで、「本当にそうだ」と思いました。美しい青葉山を車で往来し、平地のように使うのも結構ですが、山は山として、登山道を張り巡らし、起伏のあるままに利用できたら山が生きるのではないかと思いました。

『まなびの杜』編集委員会委員 内山 勝

 


 
まなびの杜<東北大学>知的探検のススメ』  

 「まなびの杜」創刊号から2002年3月発行の18号までを読みやすく編集したものです。知的探検をお楽しみいただく一助として、東北大学をのぞく窓として、お楽しみいただければ幸いです。(1,500円)
詳細は東北大学出版会へお問合せください。

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