「海の生き物たち」 1
春を待つ陸奥湾の生き物たち

  冬の陸奥湾はシベリアからの西風によって荒れ、海岸に近寄ることもできない日が続きます。しかし、海の中では、海藻タマハハキモクが林のように繁茂し始め、いろいろな動物がその間に息づいています。その中には生殖シーズンを迎えているバフンウニやエゾバフンウニが見られ、ウニの親戚のナマコも元気に動き回っています。これらの生き物は体の表面に刺があるために、棘皮動物(きょくひどうぶつ)と呼ばれ、進化の流れの中で非常にユニークな位置にあります。
 地球上の動物は背骨を持つ脊椎動物と、これがない無脊椎動物に大きく分けることができます。棘皮動物は脊椎動物に一番近い無脊椎動物です。陸奥湾岸にある理学研究科附属臨海実験所は今から80年前に開設されましたが、これまでの研究成果から、ウニの幼生には神経節と呼ばれる小さな脳が作られることを発見しています。このとき脊椎動物と同じ種類の神経系を作る遺伝子がいろいろと見つかり、働いていることが分かってきました。動物の進化にはハッキリと線を引くような区切りをつけることはできないのかもしれません。
 小さな生き物たちが多くのことを教えてくれています。津軽の荒海の中で営々と生きている動物たちにも、春はすぐそこまで来ています。

東北大学は2007年に
創立百周年を迎えます

理学研究科附属臨海実験所長 加藤 秀生
(※2004年4月から理学研究科附属浅虫海洋生物学研究センターとなります)