最近、「男女共同参画社会」という言葉をよく見かけるようになりました。1999年6月に「男女共同参画社会基本法」が制定され、東京都や宮城県など多くの地方自治体で、男女共同参画社会促進のための条例が作られています。国の基本法は、前文で、「男女共同参画社会の実現を21世紀の我が国社会を決定する最重要課題と位置付け」ると述べていますが、一体「男女共同参画社会」とはどんな社会なのでしょうか。その前に、なぜ、このような法律が必要なのでしょうか。

なぜ必要なのか
 まず、基本法が必要とされる理由は、憲法が両性平等を定めて50年以上たっても性に基づく差別や人権侵害がなくならず、男女の地位が対等でないことにあります。実際、政治面では、女性の衆議院議員の比率は7.5%で、日本は世界64カ国中105位です。職場でも、男女間の賃金格差(所定内給与額平均)は男性を100とすると女性は約63%で、セクシャル・ハラスメントも多発しています。家庭でも、意識調査では約80%が家事を妻が行うことに賛成しており、性別役割分業が依然として女性の社会進出を阻んでいます。婚姻時にも(民法上はどちらか一方を選択することになっているのですが)、実際には97%が夫の姓を選択しています。最近では、配偶者などによる暴力(ドメスティックヴァイオレンス)も問題になっています。このような女性に対する人権侵害をなくし、男女の平等な社会的・政治的参画を推進することが、いま切実に求められているのです。
 もっとも、女性差別を撤廃することが目的なら、男女平等法や性差別禁止法でもよかったはずですが、なぜ「男女共同参画社会基本法」が制定されたのでしょうか。
 その背景には、世界の理論動向が関係していました。1979年に女性差別撤廃条約が採択された時には、女性差別の禁止がめざされましたが、やがて1993年の世界人権会議の頃から、女性に対する暴力など人権問題が焦点となりました。さらに1995年の北京会議の際には、政策の説明責任(アカウンタビリティ)や女性の政策決定過程への参画が重視され、男女が平等に参画できる共生社会がめざされました。

「男女共同参画社会」とはどんな社会か
 こうして次第に、女性が男性と対等に政策決定などに参画しなければ、女性の人権も差別撤廃の目標も実現されえないこと、そのためには社会全体の性別役割分業の意識や制度・慣行の変革が不可欠であることが明らかになってきました。こうなると、単に女性だけの問題でなく、男女共通の、社会全体の課題であることがわかります。
 そこで、基本法では、「男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ共に責任を担うべき社会」を男女共同参画社会と定義し、固定的な性別役割分担の変革をめざしたのです。この共同参画の言葉があいまいで具体的内容が明らかでないなど、基本法にも問題がないわけではありません。
 しかしいずれにしても、この「男女共同参画社会」という考え方を日本の津々浦々に浸透させ、21世紀には、新しい男女共生の社会を築いてゆかなければなりません。
 そのために、基本法は国や自治体などの責務を明示し、実際に、多くの自治体や公的機関、民間の団体やグループなどで男女共同参画社会促進のためのさまざまな取り組みが始まりました。皆が知恵をだしあって、それぞれ身近な問題から見直すことで、少しずつでも良い社会に変えてゆくことができるでしょう。我が東北大学でも、今年4月に男女共同参画委員会が活動を始め、成果が期待されているところです。


つじむら みよこ
1949年生まれ
現職:東北大学法学研究科教授
専門:憲法学、比較憲法学

 

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