obからのメッセージ

 私が東北大学の門前に立った日は、4月というのに根雪の残る寒い日で、桜も散り始めた南国から来た私には大きな驚きでした。研究室では近代的な建物や高性能かつ最新鋭の実験機器の並ぶ様に驚き、どんな学生生活になるのだろうと期待に胸を膨らませました。英語の苦手な私は一生海外と縁が無いであろうと思っていたのに、研究室に行くと留学生や海外から来た研究者が多数在籍しており、研究室の議論は全て英語だったのに驚きました。男の世界だと思っていた研究室には、女性の博士課程の先輩や、職員の方がいらっしゃったのにも驚きました。

 驚きの連続で始まった学生生活ですが、先生、先輩方の熱心な指導のおかげで卒業前には複雑な機器を当たり前の様に使って実験を行えるようになりました。ボディーランゲージを加えた英語が通じず、留学生とお互いに困った顔で見つめ合い、途方に暮れた事もありました。しかし、必死で理解に努めた英語はいつの間にか身に付いており、研究内容について英語で議論するだけでなく、人生相談し合う友情まで育む事ができました。博士後期課程の時には大学間交換留学プログラムに採用していただき、豪州で共同研究を行う機会まで得る事ができました。研究と同時に結婚や出産をされていく女性研究者を間近に見る機会もあり、休み時間になると「授乳の時間です」と歩いて10分ほどの自宅へ急ぐ先輩方を見て、職住近接が可能な仙台という土地が為し得るワーキングスタイルに感心しました。

 このように、東北大学は在学中、常に心地よい驚きを与え続けてくれました。そして卒業してからの東北大学はオープンキャンパス、サイエンスカフェなどの市民講座やサイエンス・エンジェルなどのプロジェクトを通じて、新たな驚きを与え続けてくれました。テレビ、新聞などのメディアを活用するのはもちろん、「実学重視」のモットーに基づく為か、大学のある仙台市内だけでなく、さまざまな地域での出張講演など、積極的かつ実務的な手段を持って市民と接する機会を作る姿勢に驚かされました。

 私は現在、幸いにして東北大学から受けた恩恵をそのまま同じ形で伝える事が出来る職に就いております。充実した環境、人材の幅の広さ、それらに積極的に関わり取り込む事で、自分の可能性を広げる事の出来る自由度を備えた東北大の活躍にこれからも期待し、また自分の人生に還元出来るようこれからも学ばせていただこうと思っています。
 



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