アニマルシリーズ 2

ウ シ

 親子でポーズを取っているこの牛は「日本短角種」という品種です。霜降り牛肉で有名な黒毛和種や九州などで飼われている褐毛和種などと同じく、日本で品種改良された肉用牛で、先祖は岩手県の在来種であった南部牛です。その昔、三陸海岸から内陸へ塩を運ぶ山越えの道のりは「塩の道」と呼ばれ、その塩を運んだのが南部牛でした。この南部牛とアメリカからやって来たショートホーン種が掛け合わされてこの日本短角種が誕生したのです。
 山の放牧地で日本短角種は育ちます。遅い雪解けとともにこの写真のように親子揃って山に上がり、母牛は牧草を十分に食べながら子育てをします。そして父牛とともに放牧地で夏を過ごし、親子が里に下りる秋には、母牛は新しい生命を宿しています。この夏山冬里方式は農繁期に人手が掛からないという利点もあり、自然の営みに根差した飼育方法としても評価されています。
 1998年には日本短角種の中に、ミオスタチンという筋肉の発育抑制因子がないため筋肉が良く発達し、産肉量に優れる牛が発見されました。現在、その牛の産肉能力の高さを将来の食肉資源に活用する研究プロジェクトが本学農学研究科を中心に進められています。
 霜降り牛肉の脂肪の風味は格別ですが、牛肉本来の旨さを日本短角種の低脂肪なヘルシービーフで味わうのも、なかなかに「通」ですよ。

東北大学は2007年に
創立百周年を迎えます

(東北大学大学院農学研究科 渡邊康一・山口高弘)