「海の生き物たち」 3
雪の使者 アオイガイ

  秋の気配が深まった十月半ばを過ぎると、朝早くから海洋生物学研究センター周辺の磯を歩き回る人々が見られます。タコが残した白い巻貝のような貝殻を探しているのです。大きくて傷のない貝殻を拾おうと、毎日早起きをしてやって来ます。
 これは体長が10センチメートルくらいの、和名がアオイガイと呼ばれるタコの仲間です。地元では「かいだこ」と呼ばれています。透明な軟体部を透して体内に大きな貝殻を持っていることがわかり、改めてタコやイカが貝類と同じ軟体動物の仲間であることを認識させてくれます。暖海性の生物であり、陸奥湾では対馬暖流の勢いが最大になる秋に湾内に入って来ます。
 しかし、たくさん採れて喜んでばかりもいられません。昔から地元では、この貝がたくさん採れる年は豪雪になりやすいと言われているからです。これは対馬暖流の勢いが強いと日本海の水温が高く、寒気団が入ると日本海に水蒸気が発生しやすいことで説明できます。この貝が取れる頃になるとそろそろ雪のことが話題になる季節を迎えます。

東北大学は2007年に
創立百周年を迎えます


(理学研究科附属浅虫海洋生物学研究センター 経塚 啓一郎)
http://www.biology.tohoku.ac.jp/asamushi/index.html