東北大学附属図書館 所蔵資料紹介2
奈良絵本「ふんしやう」

 室町時代に成立した物語を中心とする『御伽草子』(おとぎぞうし)は、「一寸法師」「浦島太郎」などを含み、現在でも広く親しまれています。その中でもめでたい話として有名なのが「文正草子」(ぶんしょうぞうし)でした。
 その前半のあらすじは、室町時代に常陸国(ひたちのくに 現在の茨城県)の鹿島神宮に仕えていた文太が主人から勘当され、塩焼きの仕事に励む中でさまざまな幸運を得て「文正つねおか」と名乗る長者になるという立身出世譚です。後半は、文正夫妻が鹿島神宮に願をかけて授かった2人の娘が美しく成長し、姉は関白の若君と結ばれ、妹は時の帝に召されて中宮となり、文正も宰相に任ぜられ長寿を得て、一家ことごとく栄華を極めて結ばれます。
 本書はその「文正草子」を奈良絵本に仕立てたものです。奈良絵本とは、室町時代から江戸時代の初めにかけて作成された華麗な絵本で、金銀をちりばめ美しい彩色をほどこされたものです。「文正草子」は、とくに女性にとってめでたい内容を持つために、江戸時代には正月の女性の読書始の書とされ、嫁入の調度にも多く用いられました。
 なお、本書は本学初代総長沢柳政太郎の親友だった狩野亨吉博士の旧蔵書を、東北帝国大学附属図書館が購入したものの一つです。狩野は夏目漱石が終生尊敬した近代の知識人でした。狩野文庫本の中の和書は、大半がマイクロフィルムによる利用が可能で、インターネットで検索できます。
(http://www.library.tohoku.ac.jp/)

(東北大学附属図書館)