寄せられた意見・要望と回答

投稿日時:2023/01/30 14:13

英語Ⅲの高額教材の強制購入について

来年度以降英語Cに変わって行われる英語Ⅲで1万円もして、さらに半年しか使えないような教材を単位取得のために強制購入させるとはどういうことでしょうか?英語Ⅲの受講者となる対象生徒へのアンケートなども全く行われずそのような変更を行うのは、TOEFLとの癒着があるとしか思えません。そもそも2年次は英語の授業の一環としてTOEFLを受けることはなく、TOEFLを受ける生徒自体そこまで多くないと思われます。仮にこの教材をこのまま使用するとしても、使用すべきなのはTOEFL受験がない2年次ではなくTOEFL必須受験の1年次の段階が妥当ではないですか?学部の授業の教科書ですら1万円を超えるものほとんどありません。導入するなら全額、少なくとも半額くらいは補助を出すべきではありませんか?国立とはいはいえ、学生から多額の授業料を徴収していることを忘れないでください。この講義内容変更は学生のためを思っているとは全く思えません。

回答日時:2023/02/15 08:59

回答

【学務審議会英語委員会より】
研究大学である本学の学生さんには「学術目的の英語(English for Academic Purposes)」をしっかりと身につけて卒業してもらいたいと考えています。この考えから、全学教育の英語教育では、その基礎となる「一般学術目的の英語(English for General Academic Purposes)」の力を習得してもらうべく、学部・学科を問わず、新しいカリキュラムのもとで共通教材を用いた統一内容での授業を提供しています。
1年次から2年次にかけての一連のカリキュラムの中で、2年次では、「英語Ⅲ」と「英語Ⅲ(e-learning)」を同一セメスターに受講してもらうことにより、1年次の「英語Ⅰ」と「英語Ⅱ」で学んだ「一般学術目的の英語能力」の基礎的スキルを更に発展させ、より発信型の実力を涵養することを目指しています。これまでの2年次の「英語C」は、多くの学部で前・後期の一年間に渡っていましたが、令和5年度から皆さんは前期に集中して「英語Ⅲ」の2科目を受講します。そして皆さんの学習時間等の適正で効率的な配分を勘案し、対話を重視する対面授業の「英語Ⅲ」と並行して、e-learning教材による豊富なコンテンツを継続的に自律学習する「英語Ⅲ(e-learning)」に取り組むことが最高の教育効果をもたらすと考えます。

しかし、このような目的に合致したe-learning教材となると、選択肢が限られてしまいます。特に、受信(ListeningとReading)のみならず発信(SpeakingとWriting)の4技能すべてを網羅する教材となると、選択の幅が一層狭くなります。さらに、教材の質や量も無視できない要素です。世界水準の質の高い練習問題がたくさん提供されていることが重要です。このような制約がある中で慎重に検討して選定した教材が、今回学生の皆さんに購入をお願いする「Official TOEFL iBT® Prep Course(OTPC)」です。
この教材を採用するからといって、大学側には組織的にも個人的にもいっさい収益はありません。また、「TOEFL®」受検対策のためでもありません。もちろん、留学などの目的のために受検対策にも活用してもらえれば一層好ましいですが、本来の目的はあくまでも「一般学術目的の英語」能力のさらなる向上と仕上げです。

「学術目的の英語」といった場合、もっとも親和性が高いのが「TOEFL®」テストです。1年次に(「TOEIC®」などではなく)「TOEFL ITP®テスト」を2回受検してもらっているのもこのためです。「一般学術目的の英語」がどれだけ身についているか、授業を受けた結果どれくらい伸びたか、あるいは、まだ不十分なところはどこか、といったことを確認して、今後に活かしてもらうためです。大学側としても、学生の皆さんの受検結果をカリキュラムや授業内容の改善などに活用しています。今回のe-learning教材が「iBT」向けであるのは、「一般学術目的の英語」から「学術目的の英語」への飛躍を目指してもらいたいという意図からです。
集団を相手にする教室での授業では、個々の学生さんの状況に応じた対応をすることに限界があります。その点e-learningでは、たとえば自分に足りない部分を自分で発見し、繰り返して自分のペースで練習して改善してゆくことができます。本学の学生さんには世界に羽ばたいて活躍してもらえることを期待しています。その意味では、4技能が高いレベルでバランスよく身についていることや、それらの技能を統合して運用できることが重要です。英語の4技能を個別にではなく、統合的に練習できるというのが、今回購入をお願いしているe-learning教材が他の教材に勝っている点です。そしてこのOTPCは、世界標準の公正な評価を前提とした豊富な自律学習を担保しています。
単に「何かについて英語で話す」とか「このトピックについて英文を書く」という単独課題の練習だけではなく、OTPCでは「聴いてから(まとめて)書く」とか「読んでから(要約して)書く」という統合的な能力を育成することができます。これも「オンラインで学術的な講義のビデオを観てから内容を再統合して話したり書いたりする」とか「オンラインで一定時間内にまとまった量の学術的な文章を読んで、その内容を要約して話したり書いたりする」というような練習となり、そこでも客観的な評価結果を受け取ることができます。学術的な講義や文献を聴いたり読んだりして受容能力を養い、それを自分なりに解釈して統合して発信する能力を総合的に身につけることができるのが、4技能を網羅した今回のオンライン教材です。そして英語で聴いたり読んだりしたことに基づいて自らの意見を表明できる、という能力は学生の皆さんの将来の社会人としての仕事や研究者としての活動に必ず有益なものであり、その英語力を学部後半や卒業後から身につけようとするのではなく、1年次で「一般学術目的の英語」の基礎を身につけた直後の2年次前期の期間にこそ身につけてほしいと思います。また、「英語Ⅲ(e-learning)」での学習は、並行して受講してもらう対面式の「英語Ⅲ」の授業におけるプレゼンテーションやディスカッションの訓練と強く結びつくもので、イン・クラスでの学習とオンラインでの学習の大きな相乗効果も期待できます。
さらに、なぜ紙媒体の教科書ではなくこのオンライン教材なのかという点ですが、それは、「インターネットを介して世界で最も信頼性と客観性のある自動評価システムによる採点や評価が得られ、特に人間による大勢の回答者に対する統一した評価が難しいスピーキングやライティングという発信能力の世界標準尺度での評価を受けることができる利点があるから」です。例えばスピーキング評価の場合には「流暢さ・抑揚・語彙選択・個々の発音」、ライティング評価の場合には「構文・文法・語彙選択・首尾一貫性」などの基準がありますが、これらに基づいた客観的で統一された評価が返されてきます。「何となく上手にしゃべれていない」とか「書き方が拙い」というような主観的な評価を受けるわけではないので、自分の英語発信力に不足しているポイントが客観的に把握でき、その評価を効果的に利用した自律的な学習によって着実な能力の向上が図れます。また、ライティングの訓練では、「仮に一つ一つの英文がある程度正確でも、全体として何が書かれているのかが分からない、つまり首尾一貫性に欠ける」という評価を客観的な指標をもとに受けられますし、より良い書き方のサンプルなども適切に示されます。「自分の英語力に足りない部分はどこか、を常に自覚しながらのオンライン学習」は結果的に大きな成果をもたらすものです。

学生の皆さんに1万円を超える出費をお願いするのはたいへん心苦しく思っています。
英語委員会としても学生さんの負担を少しでも軽減できるよう各方面と話し合いを進めており、分割払いも可能(ただし、その都度振込手数料が発生します)とすることや、もう少し価格を抑えられないか等、交渉中です。さらに、授業料免除対象となった学生さんへの一部補助も検討しています。

e-learningのような学習形態では、学習者の自主的で積極的な取り組みが欠かせません。しかし、「英語Ⅲ(e-learning)」の授業については、学生さんに教材を購入してもらって、後は学生さんの自主性に任せる、といった「丸投げ」のような運営は考えていません。学生さんの自主的で積極的な取り組みが大前提であることに変わりはありませんが、その取り組みを支援し後押しするような運営を予定しています。
「英語Ⅲ(e-learning)」の授業については、教室での普通の授業同様、学習グループ(クラスに相当する単位)ごとに、担当教員1名に加えTAを2名配置します。一定期間(1ヶ月程度)ごとに取り組んでもらう範囲を指定し、担当教員とTAが学習の進捗状況をモニターするとともに、必要に応じて学生さんに個別に連絡をとるようなことも計画しています。

最後になりますが、e-learningの利点のひとつに、時間や場所を選ばないという点があげられると思います。このようなe-learningの利点を活かす形で、1回と言わず何度も取り組んで積極的に活用できますし、前期授業終了後も10月初めまでの利用が可能で、夏休み中も反復して自律学習を継続することができます。このように金額以上の価値になるような取り組み方をしてもらえることを望んでいます。そしてその結果として高いレベルの「一般学術目的の英語」能力が確実に身につくものと思います。

[ 戻る ]