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インタビュー

里見 進 

「ワールドクラスへの飛躍」と
「東北復興の先導」をテーマに

――総長就任にあたっての抱負をお聞かせ下さい。

東北大学は、「研究第一主義」、「実学尊重」、「門戸開放」を掲げて、多くの人材を輩出し、多くの研究成果を世に送りだしてきました。また、井上総長の下では世界のリーディングユニバーシティをめざして努力してきました。しかし残念ではありますが、ここ数年は世界での評価が徐々に下がってきております。

これから6年間にやるべきことを二つ提示します。その一つは「ワールドクラスへの飛躍」です。世界に飛躍するために必要な教育・研究面での課題を明確に設定し、その一つひとつを丁寧に解決しながら前進していきたいと考えています。

二つ目は「東北復興の先導」となることです。東日本大震災から約一年が経過しましたが被災地はいまだ惨憺たる状況で、復興へのビジョンは描き切れていません。東北大学は被災地の中心にある大学として復興の先導役になり、東北の復興にとどまらず日本全体の復興を引っぱって行くエンジンの役割を果たすことが求められています。幸い、震災後の早い時期に立ち上げた震災復興新生研究機構の7つのプロジェクトには、大型の予算が処置されました。東北大学はこの予算を使って全世界の英知を結集し、新しい知識・技術を生みだし、産業の育成や施策を通して、被災地の復興を先導しなければなりません。

私が総長を務めさせていただく6年間で、「ワールドクラスへの飛躍」と「東北復興の先導」の2つを達成したいと考えています。たとえ道半ばになるにせよ、次世代では実現するように強い基盤は築きます。



国際化社会のリーダー育成と
研究の社会還元への道筋づくり

――大学運営にあたって、まず「教育」についてはどのようにお考えでしょうか。

社会に要請されている大学の働きは、大きく言えば人材の育成と研究成果の還元です。人材育成については大学の根幹でもあり、全学的に取り組んでいきます。今回の震災を経験して我が国に欠けていたのは、問題を根本的に考えて判断を下せる社会のリーダーを育成して来なかったということです。この点を反省して根本的な解決策を探らなければなりません。社会のリーダーを養成する一つの手法として古くから欧米ではリベラルアーツが重視され、これを教えることが大学教育の目的の一つでした。時代とともに必要となる教養は変化します。これからの社会の変化を見据えながら、現在必要なリベラルアーツとは何なのか、もう一度見直してみたいと思っています。できるだけ科目を絞って提示し、これを必修とすることで、本学の卒業生はこれらのことを必ず身につけて卒業するようにしたいと思います。

また、現代社会は情報化が進み国境のない世界になりつつあります。これからは「国際的に通用する人材の育成」が大学教育のキーワードになると思います。諸外国の人々と対等に議論する語学力とコミュニケーション能力を身につける必要があります。

専門教育との両立、課外活動の充実など課題は多いのですが、教育は大学の本分ですので最優先で対応していきます。

東京大学が秋入学を提案していますが、これはあくまで国際化の手段であり、外国の学生や教員に選ばれる大学になるには何を整備すべきかを検討することがより重要になります。また、我が国でスムースに移行するには2学期制ではなく4学期制の方が良いのかもしれません。いずれにせよ。秋入学に関してはその是非を十分に議論していきたいと考えます。



――「研究」への取り組みについてはいかがでしょうか。

東北大学は「研究第一主義」、「実学尊重」を大学の理念とし、研究成果を社会に還元し高い評価を受けてきました。これは今後も継続し、よりよい社会の実現をめざしていきます。

東北大学がワールドクラスの大学として発展するには、研究面での飛躍は必須のことになります。ごく当たり前の手法として、東北大学の優れている研究をさらに伸ばし、弱点を強化していきます。各研究科、各研究所には自分たちの強み弱みを分析し、どう変えていくべきかを充分に討議してもらうつもりです。

次に今回の大震災や原発事故を受けて価値観の大きな変化が起こりつつあるわけですから、東北大学としては未来の人類のあり方を考えて、人類共通の課題を設定し、どの様に解決すべきかを重点的に取り組むべきかと思います。このような研究は、これからの世界の進むべき方向性を指し示すことであり、本学の大きな強みになると考えます。課題を抽出し選択する「重点研究領域の検討プロジェクトチーム」を早い時期に大学内に作ります。

一方、研究成果を社会に還元するには、実用化を手助けする体制の整備も必要になります。これまで生命科学系のトランスレーショナル組織としてTRセンター(Translational Research Center)を立ち上げ成果を上げてきましたが、今後は生命科学以外の分野でも実用化を支援する組織を強化していきます。

東北大学は「実学尊重」を理念としていますので、ともすればすぐに役立つ研究だけを重視していると思われがちです。しかしながら実際は、即効性は無くても広い意味で社会を豊かにする基盤の研究も世界のトップ水準で実施されてきました。今後も実用と基盤の研究が共存し協力し合って進歩する体制になるように支援していきます。

本部機構の仕事は重点課題を積極的に推し進めるとともに、各研究科、各研究所と相談をしながら教育・研究環境を整え、研究者や学生、教職員が働きやすく学びやすい仕組みを作っていくことに在ると考えています。プレイングマネージャーよりも裏方の仕事が多くなるのかもしれません。



部局、研究所の知恵を結集し、
よりよい変革へ施策の実践

―「キャンパス整備」についてはどのようにお考えですか。

卒業してから学生時代を振り返る時に、いいキャンパスだったと思えるのが理想の姿です。これまでも青葉山キャンパス整備計画などをはじめいろいろ工夫されていますが、震災や移転計画の大幅な変更もありましたので、もう一度見直しをする必要があります。欧米の大学は長い歴史の中で誇りうるキャンパス環境を順次整えてきています。欧米の大学の良さに学びながら東北大学も、50年100年先を見越して独自の大学作りをスタートさせなければなりません。機能、配置、景観、交通網、市民との接点などを考慮しながら、美しく安全なキャンパスを作りたいものです。



―「大学運営」の取り組み方についてお聞かせ下さい。

大学運営に関しては、問題点と解決策を明確に提示し、ぶれないことが大切だと考えます。問題の所在に関してはこれまでに各部局や各研究所で議論がなされているでしょうから、自由に意見を述べあえる環境を整えさえすれば、人材豊富な本学では必ず解決策が見つかると思います。挙げられたアイディアを公平な目で取捨選択をし、方針を提示するのが本部の務めです。また、大きな目標を最終的に達成するには、具体的で実現性の高い小さな目標を設定し、期限を決めながら一つ一つ確実に達成していくことで、構成員が変化の担い手であることを実感できるようにしたいと思っています。

最後になりましたが、「ワールドクラスへの飛躍」を実現し「東北復興の先導」の役割を果たすためには同窓生の皆様をはじめとする萩友会会員の皆様のご理解とご支援が不可欠と考えています。また、本学と会員の皆様とのネットワークおよび会員同士のネットワークを通じて「愛校心の醸成」を意識した活動を行い、会員の皆様との絆を深めたいと願っております。皆様のご協力をどうぞよろしくお願いいたします。






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